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俺だけのスキル【ガチャ】が世界を救う  作者: 渡琉兎


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第115話:二つの凶報

「……はは、まったく君は、驚かせることの天才じゃないのか、天地プレイヤー?」

「……さすがに今回のことは、私も予想外だったわ」


 なんとか我に返った拳児と影星が、呆れた表情でそう口にした。


「なるほどな。再審査での一撃は、スキル【鉄壁反射】によるものだったか」

「それに、今ではスキル【中級剣術】も【上級剣術】に……潜在能力とかじゃなく、今の実力ですらSランクに匹敵しそうね」


 納得したように拳児が呟くと、影星は竜胆の実力を冷静に分析していく。


「Sランクだって? いやいや、それはないだろう」


 竜胆はSランクに匹敵すると言われて首を横に振った。


「スキルが多いに越したことはないが、それでも俺には明らかに経験が足りなさすぎる。彩音もそうだが、Cランクの恭介にすら勝てないと思うぞ?」

「えっ? 冗談ですよね、竜胆さん?」

「今の竜胆君を相手にしたら、僕なんて一撃でやられちゃうと思うんだけど?」

「……は?」


 竜胆の発言は本音だった。

 経験から来る戦い方は間違いなく彩音や恭介の方が上だろう。しかし彼は単純な実力ですら二人に負けていると本気で思っている。

 しかし、彩音も恭介も実力では竜胆に勝てないと思っており、その実力は二人の経験から来る戦い方を駆使したとしても及ばないくらい、差が開いてしまったと感じていた。


「スキル【上級剣術】の時点で、僕はお手上げだね」

「【死地共鳴】が発動しなくても、そこに【鉄壁反射】や【魔法剣】が加わるわけですよね? 絶対に勝てませんって!」

「正直なところ、私も天地竜胆と真正面からやり合うのはごめんだわ」


 恭介と彩音だけでなく、そこに影星まで加わってしまえば、竜胆はこれ以上の否定を口にすることはできなかった。


「……本当に、俺はそんなに強くなっているのか?」


 だが、竜胆は自分の実力を信じ切れずにいる。

 それは結局のところ、ジェルゲイルとの一戦がギリギリなものだったからであり、プレイヤーに覚醒してまだ日が浅いからという部分もあった。

 パーティを組んでいる恭介や彩音に助けられてきた、という部分も要因の一つかもしれない。


「俺から見ても、天地プレイヤーの実力は日本屈指と言えるだろう。再審査の時点で、潜在能力ではSランクを目指せると思っていたが、まさかこうも早く、Sランクの領域に迫ってくるとはな! ふははははっ!」

「笑えませんよ、支部長」


 嬉しそうに笑いだした拳児を見て、竜胆は渋面を浮かべる。


「だがまあ、実力と自信が伴わないことも多々ある。覚醒して短期間でそれだけの実力を身に着けたのならばなおさらだ」


 竜胆がどうして自分の実力に自信が持てないのか、拳児には理解できていた。

 それは彼自身も若い頃に実力を身に着け、日本最速でのSランクプレイヤーに認定されたからだった。


「今はまだ、天地プレイヤーのことを認識している人間が少ないからいいだろう。しかし、認知され始めれば話は変わってくる」


 拳児はそう語り出すと、表情を真剣なものに変えた。


「マスコミも天地プレイヤーを引っ張り出そうとしてくるはずだ。それまでは俺が守ってやる。だから、それまでに自信を付けるんだ、いいな?」


 Sランクとは言わずとも、若くして実力を付けたプレイヤーを拳児は何人も見てきた。

 しかし、自信が伴わないまま星の多い扉攻略へ向かい、心が折れた者や、扉から帰ってこなかった者も、同じくらいの数だけ見てきている。

 竜胆にはそうなってほしくないと、拳児は本気で心配してくれていた。


「……分かりました」

「風桐プレイヤーに矢田プレイヤー。どうか天地プレイヤーを助け、導いてやってくれ」

「「はい!」」


 こうしてひとまずの目的が達成された時だった。


 ――ブゥゥ、ブゥゥ、ブゥゥ、ブゥゥ。


 竜胆のスマホが震えだした。


「すみません、少し席を外します」


 断りを入れて竜胆が立ち上がると――


 ――プルルルル。


 今度は支部長室の内線が鳴った。


「おっと、俺も失礼するよ」


 話の内容が聞こえないよう、竜胆は内線が置かれている机の反対側の壁際まで移動する。


「……絢瀬先生?」


 電話を掛けてきたのは、鏡花の担当医である環奈だった。

 通話をタップしてスマホを耳に当てる。


「先生、何かあったん――」

『――急いで病院へ来てちょうだい! 鏡花さんの容体が急変しました!』


 電話口から聞こえてきた内容に、竜胆は顔を青ざめる。


「な、なんでだよ! エリクサーで鏡花は治ったんじゃなかったのか!」

『――状況が私たちにも分からないの! お願い、竜胆さん!』

「分かった、すぐに向かいます!」


 電話を切った竜胆が振り返ると、話の内容が聞こえていた恭介と彩音も立ち上がっていた。


「なんだと!? それは本当なのか!!」


 すると今度は拳児が声を響かせた。

 その声音には焦りの色が見え、表情も険しいものになっている。


「すぐに対策を考える。あぁ、念のため、Cランク以上のプレイヤーを招集しておいてくれ」


 そう言い終わると、拳児は内線を荒々しく置いた。


「……何かあったのかしら、支部長?」


 そう口にしたのは影星だ。


「…………二重扉だと思われていた星4の扉の攻略が、失敗した。失敗したパーティは、Aランクだ」


 拳児からもたらされた内容に、竜胆たちは絶句してしまった。

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