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俺だけのスキル【ガチャ】が世界を救う  作者: 渡琉兎


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第11話:ランク審査

 驚いたものの、下級剣術のおかげか竜胆の体は自然と動いていた。

 一歩前に出るのと同時に疾風剣を居合切り、すれ違いざまにゴブリンの胴を一閃して見せたのだ。


「……ふぅ」

『それじゃあ次はワイルドウルフです』

「れ、連戦かよ!?」

『モンスターは待ってはくれないの、来るわよ!』

「くそっ、分かったよ!」


 胴を両断したはずの人形だったが、気づけば元に戻っており、その姿をワイルドウルフに変化させていた。


(ワイルドウルフはソードウルフの下位互換。だが、その強さには当然個体差もある。油断は禁物だ)

『ガルアアアアッ!』


 鋭い牙を向けながら突っ込んでくるワイルドウルフ。

 直線のスピードは脅威になるモンスターだが、横の動きにはめっぽう弱いと言われている。

 竜胆はここでも知識を知恵に変え、実戦に活かしていく。


「はあっ!」

『ギャインッ!?』


 体を半身にすることで必要最低限の動きでワイルドウルフの牙を回避、そのまま疾風剣を振り下ろして首を刎ねた。


『次、ゴーストナイトです』

「こいつはスタンピードの時の……」


 甲冑型のモンスターであるゴーストナイトを見た竜胆は、覚醒のきっかけになったモンスターを目の前にしてやる気に火が点った。


「よーし、こうなったらやれるところまでやってやるよ!」


 こうして竜胆は連戦を重ね、最終的には五試合目で力尽きた。

 ゴブリン、ワイルドウルフ、ゴーストナイト、ソードウルフ、そしてキラーパンサー。

 竜胆よりも倍の大きさを誇るキラーパンサーだが、その特徴は機敏な動きにある。

 ワイルドウルフやソードウルフの動きには対応できていた竜胆も、倍の速度で巨体が動き回るとあっては対処しきれなかった。

 最終的には体当たりをまともに食らってしまい、壁に背中から激突して勝負あった。


『ランク審査を終了します。天地様、お疲れ様でした』

「いてて……でもまあ、下級剣術ならこんなもんだよな」


 壁にもたれたまま腰をさすり、竜胆は小さく息を吐く。


(……それにしても、今回はガチャが発動しなかったな。本物のモンスターを倒さないと発動しないのか。まあ、疑似モンスターで発動していたら、チート級のスキルになっちゃうもんな)


 そんなことを考えていると、管理室から青葉と彩音がトレーニングルームにやってきた。


「お疲れ様、竜胆さん」

「おう」

「今回のランク査定ですが、EランクからDランク下位のモンスターへの対処は問題ありませんでした。しかし、Dランク上位のモンスターには対処しきれていなかったため、Eランク査定となります」

「……Eランクかぁ」


 プレイヤーランクには六段階あり、竜胆が査定されたEランクが一番低く、順番にD、C、B、A、そして一番高いSランクとなっている。


「Eランクなの? キラーパンサーには負けていたけど、動きはセオリー通りに動けていたじゃないの」

「ですが、負けは負けです。本物のモンスターであれば負けた時点で命を落としてしまいますし、まずはEランクから実力をつけていってもらいます」

「こればっかりは仕方ないか」


 何やら納得がいかない様子の彩音だったが、竜胆としてはEランクからスタートした方が都合が良かったので受け入れることにした。


(ガチャの検証ができてないしな。Eランクなら比較的簡単な扉の攻略をしながらの検証ができるはずだ)


 そう考えた竜胆は、ふと昨日のスタンピードを思い出し青葉へ声を掛けた。


「あの、柳瀬さん。昨日のスタンピードって、星いくつの扉だったんですか?」


 異世界と繋がる扉の正面には、内側の難易度を示す星が刻まれている。

 星の数が多ければ多いほど難易度が高くなり、中で跋扈しているモンスターも当然強くなる。

 扉の攻略にはプレイヤー協会も失敗してスタンピードに繋がらないよう、派遣するプレイヤーのランクにも細心の注意を払うものなのだが、今回はスタンピードが起きてしまった。

 そのため、竜胆は攻略に失敗した扉の星の数が気になったのだ。


「今回は星三つでしたので、Dランク相当の扉になります。ですが、指揮を執っていたプレイヤーがモンスターの奇襲を受けてしまい死亡、そこから瓦解して攻略が失敗してしまったようです」

「だから扉の攻略には上位ランクのプレイヤーを派遣したらいいって何度も言っているのに、プレイヤーの成長を促すとかなんとか言っちゃってさぁ」

「こ、今回は失敗しましたが、今までは問題なく攻略できていましたよ、風桐様!」


 扉は今もなお現れ続けている。

 どこにいつ、どれだけの星の数の扉が現れるのかは誰も把握することができないでいる。

 そのため、プレイヤー協会では上位ランクのプレイヤーを派遣して安全に攻略するよりも、適正ランクのプレイヤーを派遣して成長させ、戦力増強を図ることを基本方針にすると決めていた。


「たまたま近くに私がいたからよかったけど、そうじゃなかったらもっと被害が拡大していたかもしれないのよ?」

「彩音、そこはたぶん、協会のせいじゃないと思う」

「どういうこと?」

「実は、天地様からの報告から、予備隊として派遣されていたプレイヤーの一部が任務放棄をしていたようで、そのため被害が拡大してしまったようなのです」


 いずれ公表される情報なのか、青葉は隠すことなく彩音に事実を告げていた。


「それも聞いてるわよ。別口の報告にもあったわよ、その内容」

「そうなのか?」

「そうよ。だから私はそれも踏まえて問題だって言いたいのよ!」

「まあまあ、落ち着けって。それを柳瀬さんに言っても意味がないだろう?」

「それは……まあ、そっか。ごめんなさい、柳瀬さん」

「いえいえ……実際、協会が叩かれることにはなるので、仕方ないところではあるのですが……はぁぁ~」


 最後の方は彩音と青葉の愚痴が零れ落ちる結果となったが、竜胆のランク査定は無事に終了した。

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