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山ン本怪談百物語

ラジオからの声

作者: 山ン本

こちらは百物語九十二話の作品になります。


山ン本怪談百物語↓


https://ncode.syosetu.com/s8993f/


感想やご意見もお待ちしております!

 数ヶ月前、親戚のおじさんが病気で亡くなりました。


 おじさんは骨董品集めが趣味で、主に昔使われていた「壺」をよく集めていたそうです。


 おじさんの葬儀が終わった後、親戚から一部の骨董品をしばらくの間預かっていてほしいと連絡を受けました。


 私が頼まれたのは、おじさんがお気に入りだった壺3つ。ほかは処分するらしいので、整理する間だけ預かってほしいとのことでした。


 私が車で壺を取りに行き、家の中へ運び終わった途端に事件が起きました。






 「ねぇ、何それ…」






 壺の入った箱を妻が驚いた表情で見ていました。


 そして…


 「そんな『やばい物』を家の中に持って来ないで!」


 温厚な妻が珍しく激怒し、壺の入った箱を家に入れないでと頼んできたのです。


 「危険な物って…親戚のおじさんの物だ。しばらく預かるだけさ」


 私がそう言うと、妻は怯えた表情で壺の入った箱を指さし、こう言ったのです。






 「この中にある赤黒い壺、絶対ダメな奴だよ。壺の中からたくさんの手が出てきているのが見える」






 私は驚きました。


 私は妻に「おじさんが使っていた物を預かってくる」としか伝えていなかったのです。箱の中身が壺だということは知らなかったはず…


 後で聞いたのですが、妻は昔から不思議な体験をすることが多かったらしく、普通の人には見えないものがよく見える人でした。


 「とにかく、物置に置いておくから今回だけは勘弁してくれ」


 私は妻を説得すると、庭にある物置へ預かっている壺を押し込んだのです。


 これで大丈夫だと思ったのですが、事態はすぐに悪い方向へと向かっていきました…






 あの壺を預かってから数日後、我が家で「怪現象」が起き始めました。


 棚に置いてあるコップが急に床へ落ちて割れる。


 夜中にトイレの水が勝手に流れる。


 窓を何度も叩く音が聞こえるが、確認しても誰もいない。


 挙句の果てに、妻は家の中で「落ち武者」のような人を目撃するようになりました。


 子どもも原因不明の熱を出したりと、状況は段々と悪くなっていきます。






 気になった私は、親戚にあの壺について詳しく聞いてみることにしたのです。


 すると…






 「あの壺かぁ。おじさんのお気に入りだったらしいけど、赤黒い壺を買ってから急におじさんおかしくなってなぁ。骨董品の店じゃなくて、どこかの誰かから譲ってもらったらしいぞ」


 あの赤黒い壺は得体の知れない不気味な物だったらしく、私は他の親戚たちと相談して壺を近所のお寺に預かってもらうことにしました。






 私が壺を持ってお寺へ向かったのは、仕事が終わってからのこと。


 時間は夜の9時過ぎ。


 お寺の関係者さんへ連絡をすると、すぐに持ってきなさいと言われました。


 ダンボール箱に入った壺を車の後部座席に乗せると、私はすぐに車を走らせました。






 車を走らせてから数十分後、私は車のバックミラー越しにふと後ろの段ボールを見てしまいました。


 すると…






 ガタガタ…ガタ…ガタ…






 「動いてる…わけないよな…」


 後ろに置いてあるダンボール箱が動いているように感じました。


 普通に考えると、車の振動で動いているのだと思うのですが…






 カサカサカサ…カサカサ…カサカサカサカサ…






 「はは、ゴキブリでも紛れ込んでるのかなぁ」


 次に聞こえてきたその音は、ダンボール箱の内側を爪で引っかくような音だったのです。


 怖くなった私は、咄嗟に車のラジオの電源ボタンを押しました。






 ザザ…ザザァ…






 スピーカーから聞こえてくるのは、砂嵐のような音だけ。


 「何かやってないかな」


 ラジオの周波数を合わせようとしていると…






 (あ……あし………ザザァ…は…よて………す…)


 ラジオから女性の声らしきものが聞こえてきた。


 「よかった、これで…」


 そう思った途端…






 (シィイイイイイイイイィィイイイイイイイイイイイイイイィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィィィネェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェ)





 それは男性とも女性とも判断できない程に強烈なものでした。

 

 私は何も言わず、ラジオの電源を切りました。


 何も聞かなかったふりをして。


 それからお寺に到着するまでの数分間、私は後ろの席を確認することなく、恐怖に怯えながら運転を続けました。






 無事にお寺へ到着した後、出迎えてくれた住職さんが私の持ってきた壺を見て顔を青ざめました。


 「この赤黒い壺。かなり古い壺で、昔処刑された罪人の首を洗った壺だと思うよ。罪人だけでなく、無実の罪で殺されていった人の怨念まで大量に入ってますよ、これ」


 住職さんの話によると、この赤黒い壺を持ち続けていれば、いつか一族全員「絶滅」してしまうと言われてしまいました。


 あの赤黒い壺は今でもお寺で厳重に保管されているそうです。


 皆さんも、曰く付きの骨董品にはご注意を…

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― 新着の感想 ―
[良い点] これはまた、物凄い特級呪物を預かってしまいましたね。 果たして件の赤黒い壺は、どういう伝手で回ってきたのやら…
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