徹夜明けの異動
初めての執筆でミスも多いですが何卒よろしくお願いします。
時刻は朝六時。
その日、私は上からの呼び出しを受けて、上司の応接間に来ていた。
徹夜明けの任務の帰りにいきなり呼び出された。
これでしょうもないことだったらストライキしてやる。
「八神様、何の御用でしょうか?」
「今は周りに誰もいないから、敬語じゃなくてもいいぞ。」
偉そうに言ってくる男の名前は八神剛樹。現在の異能力社会のトップである八神家の現当主。筋骨隆々とした見た目とその鋭い眼差しからくる威圧感はか弱い女性なら気絶するほどだ。
「……それで?早く要件を言ってよ。眠いし。」
「お前には今日から、護衛の任務に就いてもらうこととなった。」
……早く言えとは言ったけど意味が分からない。唐突すぎる。
「聞いてないけど。」
「今言ったからな。」
いきなりそんなことを言われても困る。それに私は後ろ暗い仕事をしているから、自分で言うのもなんだけどそういうのにはあまりむいていない。
「頼む相手を間違えてない?」
「まあ、確かに暗部の頭のおまえに護衛を頼むのは不適切ではあるが、他にできるやつがいないのさ。」
「いやいるでしょ。」
(なんでよりにもよって、暗部の私が護衛なんかしなきゃいけないのさ。私は守るより殺すほうが得意なんだけど。)
「今回の護衛対象は、異能教育専門学校の生徒だからな。」
「!」
異能教育専門学校。
異能力者と呼ばれる大体千分の一の確率で生まれてくる驚異的な能力を持つ人間。
そんな人間を教育する、日本にある異能力者専門の学校で、異能力についての専門的な知識や技術を学ぶところだ。
全国から集まる強力な異能力者を生徒として育成する。
「……それってホントに言ってるの?」
「本当だ。」
(あの学校の生徒かー。)
あそこは異能力者を育てるだけあって、教師もかなり強いらしいし、なにしろ異能力者の巣窟だ。
そんなとこに襲撃をかけるような奴はいないし、いたとしても大体教師に制圧されて終わるはずだ。
「なんでそんなところに護衛がいるのさ?」
「先日、あそこが何者かに襲われそこの教師が一名死亡した。襲撃者の正体も全く分からず、死亡した教師は準一級異能力者だった為、一級の誰かが派遣されることになった。」
準一級異能力者。それは異能力者の中でも上位数パーセントに入る強者だ。
異能力者は上から順に、極級、一級、準一級、二級、準二級、三級、四級に分類される。
この階級は国家試験により決められ、最も多いのが四級、最も少ないのが極級の異能力者だ。
準一級なら一流、一級なら超一流、極級は人外、それが今の異能力社会の認識だ。
「じゃあ、八神さんが行けばいいじゃん。」
「俺は当主だぞ。そんなことをやっている暇はない。それに今回の最優先護衛対象は俺の息子だからな。教師として入った時の身内びいきを防ぐために俺は担当できない。」
(私だって忙しいと思うんだけど。徹夜明けだし。)
「他の人もいるでしょ。」
「他にもいるが、今回は万全を期すために教師としてではなく、より関わりやすい生徒として護衛の任務にあたってもらう。一級以上で生徒に紛れ込ませるとなると年齢的に考えてもお前しかいない。それに自分の子供もいるからな。出来ればちゃんとしたやつにやってもらいたい。」
(ちゃんとした暗部ってなんだ?)
「では任せたぞ。今日の報告はお前の部下にさせる。いつもの部屋に制服とお前の補助をする奴がいるから準備ができ次第そいつと一緒に学校に向かえ。」
「私が抜けても暗部は大丈夫なの?」
「余裕だと言っていたぞ。」
「うへぇ」
「話は終わりだ。徹夜明けだからシャワーを浴びたりする時間は取るが今日の朝礼は九時からだから、遅刻しないようにしろよ。」
(えー。お昼寝しようと思ってたのに。)
* * * * * *
シャワー室でシャワーを浴びた私がいつもよくいる部屋に行くと、一人の女性がおじきをしてきた。澄んだ空色の髪に、椿のような赤い瞳。切れ長の瞳には、クールな印象を受ける。
「おはようございます。今日から胡桃様のお手伝いをさせていただく七瀬空と申します。どうかよろしくお願い致します。」
女性の名前は七瀬空。七瀬家の跡取りだ。七瀬というのは異能八家のうちの一つ。
異能八家というのは明治から続く強力な異能力者を多く抱える集団で、何故そんな家があるのかといえば異能が低確率ではあるが遺伝するからだ。
通常、異能力者が生まれるのは千分の一だが、異能力者の子供であればその確率は五分の一にまで上昇する。また、異能力者の子供は親の異能に似通った異能を発現することがある。
異能八家は名前の通り八つ存在しており八神家、七瀬家、土御門家、鳳条家、五十嵐家、京極家、百目鬼家、小鳥遊家の八つである。
七瀬家の相伝の異能は空間干渉系の異能。空間に干渉することで物を転移させたりする汎用性の高い異能だ。
「うへへ。そんなにかしこまらなくていいよー。学校には一緒に行くんだし敬語じゃおかしいでしょ?」
(おーう。すっごい美人さんだなぁ。でも七瀬家の跡取りが補助って。うーん、きな臭い。)
暗部としてその辺に詳しい胡桃は違和感を感じたが、自分にはどうしようもないので思考を放棄した。
「いえ。立場の違いを明確にするためにも、敬語は必要です。」
「私は気にしないから大丈夫だよ。それに立場で言っても、七瀬さんは七瀬家の跡取りだし。だから無理して敬語で話さなくてもいいよ。」
「……わかりました。では胡桃さん、こちらの資料を読み終わりましたら、この制服に着替えてください。」
(胡桃様が胡桃さんになっただけだ。)
七瀬さんはすました顔をしてるが、実は緊張しているのかもしれない。
暗部で汚れ仕事をしていた私が急に七瀬家の人間を補助として学校に行くのは何だか不思議な気持ちだが楽しみな気持ちもないと言えば噓になる。
私は諸事情により中学校を中退して暗部に勤めていたため、期間で言えば約二年ぶりの学生生活だ。
資料には、七瀬家の分家のうちの一人として入学するため、学校での立場は七瀬さんのほうが上だ。護衛の任務ではあるが、平凡な設定の生徒として入学するため、不自然にならないように階級は三級。普通より少し強いくらいの階級にしてある。クラスはAクラスに配属され、そこで異能八家の跡取りを優先、その中でも八神家の跡取り、八神俊介を最優先で護衛するように書かれてあった。
また、三級の生徒として入学するため襲撃者との交戦時以外は極力、平凡な生徒として振る舞うように書いてあった。だったら最初から一級の生徒として入学させればいいとも思ったが、暗部で活動してきたため知名度が全くなく、この年(十六歳)で一級なのにそれは不自然であり、何より襲撃者と内通しているかもしれない人間の存在を考慮した結果、普通より少し強い程度の三級の異能力者として入学させることにしたらしい。
渡された制服は、どこにでもあるような紺色のブレザーの制服だった。異能の専門学校と言っても制服は普通のようだ。
「では着替え終わりましたら、外で車を待たせているのでそれに乗って学校まで向かいましょう。」
「そうだね。学校では空様って呼んだほうが良いかな?」
そう言うと澄まし顔だった空の顔がほんの少しだけ赤くなったが、寝不足で注意力散漫な状態の胡桃では気づけなかった。
「いえ、学校では出来れば空ちゃんと呼んでくれれば幸いです。」
「オッケー。じゃあ空ちゃんで。着替えるから少し待っててもらえる?」
私は喜びに震える空ちゃんに気付くことなく、着替えを終わらせた。そして徹夜明けの任務から休憩もはさまずに車で学校までおくられることとなった。
すぴー。
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