84:福岡県民、祝う。
「「おめでとー!」」
「おめでとう」
「ありがとうございます」
時が経つのは早いもので、いつの間にやらエリアスは十歳の誕生日を迎えた。
年々ロイに似てきている。
そして、身長は既に私と変わらない。
「ウチが子供扱いされるとは、こーゆーことなんやね」
「そういえば、この前はエリアスの姉かと聞かれてたな」
ロイがクツクツと笑っている。かっこいいがムカつく!
一人で渋格好良くなりやがって。こんちくしょう。
誕生日の夜はパーティーである。
料理を指示したり、ケーキを指示したり、色々と大変だった。
自分で作った方が早いのだけど、『奥様』は指示するのが仕事。面倒……ゲフンゲフン。
「うわぁ! ケーキ!」
ルシアナが瞳をキラキラと輝かせてケーキを見つめているが、それはエリアスのですよ。
「わかってるもん!」
「ケーキはご飯のあとだよ?」
エリアスが、ルシアナのふわふわ頭をよしよしと撫でていた。
それだけでルシアナは上機嫌。
両親は未だにエリアスより株が下らしい。
「ママン、しょぼーんですよ」
「ぷふふっ」
私がしょんぼりすると、ルシアナは楽しいらしい。
食堂で談笑していたら、料理が次々と運ばれてきた。
今日はエリアスの好きなもの尽くしだ。
オムライス、チキンソテー、海藻サラダとカルパッチョ。
そして、山盛りの唐揚げ。
貴族子息らしくなって言葉遣いも所作も美しいの一言に尽きるけれど、好きな食べ物と食欲はやっぱり男の子って感じだ。
「この、大人と子どもの中間的な可愛さ。……プライスレス!」
「…………わかる」
「人の誕生日にしみじみとした空気にならないでくださいよ」
「めんご! ツッコミは大人っ!」
わいわいキャァキャァと騒ぎながらの食事はとても楽しい。
いつもは結構にきっちりマナーを守っての食事だから、誕生日だけはマナーなし、好きなものから食べていいし、好きなものだけ食べていい。というルールになっている。
「じゃあ、ケーキだけ!」
「ぶっぶー、それはだめー」
ルシアナがブーイングしているが無視。
大人だから知っているのだ。
ケーキだけだと、後からすぐにお腹が減るのだと。
ケーキで胸は膨れるが、お腹はなかなか膨れない。
世知辛い世の中だね。
「そんなんで世知辛いと言われても……」
「ロイ、黙らっしゃい!」
「「あはははは!」」
エリアスとルシアナが楽しそうに笑う姿を見て、幸せだなぁと思ったら、少しだけ涙が滲んだ。
またしみじみしてしまった。
エリアスにバレないように目蓋を閉じ、一緒に笑って泣き笑いに変えた。
次話は本日19時頃に投稿します。




