82:福岡県民、海藻料理に思いを馳せる。
海藻を買いまくり、ホクホクで帰路につく。
屋敷に帰ったら、一番に何作ろう。
だし巻き玉子とかいいよね。とか、食べ物の話ばかりをしていた。
悲しいことに味噌はない。豆腐もない。
ワカメの味噌汁は無理だけど、醤油に近いものはあるので、カルパッチョや海藻サラダなど作れる。
「あぁぁ! お腹減った!」
「へったー」
「っ、ははは! もう少しで次の町に着くから。我慢しろ」
「はぁい」
「あい!」
エリアスは、私につられてけっこうな食いしん坊に成長している。最近は柔らかめではあるものの、固形の食べ物が殆どになりつつある。
前回と同じく果物類もかなり買い込んだし、暫くはデザート祭りが出来る!
旅行から帰り、料理やら製菓やらでとても楽しく過ごしていたら、お義母さまから私の料理を取りあつかう店を経営してみたらどうかと勧められた。
経営といっても、店長とかでお店に出るのではなく、出資とレシピの伝授の方向で。
「どうやか?」
「いいんじゃないか? カリナの作るものは、かなり珍しいし、美味いからな。人気が出そうだ」
「そうやか……」
自分としては、当たり前にあって、みんながレシピを知っていて……という感覚だったものだから、人気が出るとは思ってもいなかった。
ただ、ロイが美味しいと笑ってくれるから、いっぱい食べさせたかっただけだ。
「ん。そうだ」
「じゃ、やってみるたい」
そんなこんなで、経営を始めたお店は、開店二ヶ月で爆発的な人気を博した。
おにぎりが一番の人気商品なのが予想外すぎる。次点はいちご大福。もっとこう…………いや、有り難いですけどね。はい。
「マルティーナ、おめでと!」
「ありがとう存じます」
経営したり、新メニューを考えたり、社交を頑張っている内に、マルティーナと副団長の結婚式が執り行われた。
王族の衣装に身を包んだ副団長は、端的に言って恐ろしいほどのイケメンだった。
そして、マルティーナは、普段からは考えられないほどにお淑やかにしていた。なんか気持ち悪い。
「ほんと、カリナって失敬よね」
「めんご」
私たちの会話を盗み聞きしていたらしい、辺りにいた人々がザワッとなった。どうやら、会話の内容がドン引きだったらしい。
「いつもよりはソフトなのにね?」
「……ノーコメントとしますわ」
――――なぜだ。
次話は明日の朝7時頃に投稿します。




