80:福岡県民、海へ行く。
旅行計画から二か月、ロイがまとめて休みを取ったので、港町へ旅行することになった。
今回はエリアスとクラークくんもいるので、ハネムーンの時よりもゆっくりとした旅程になる。
おかげでお尻の調子は良好だ。
痔じゃないよ? 尾てい骨だよ?
そんな言い訳を続けながら馬車に乗ること三日半。
無事に港町に着いた。
「エリアス、あれが海だ」
「うみ! あお!」
「あぁ、青いな。後で水遊びしに行こうな?」
「う!」
エリアスは初めて見る海に大興奮の様子だった。
ひとまずホテルに行き、荷物の解体等をエマちゃんたちにお願いした。
今回はエマちゃんも着いてきてくれているのだ。おかげで馬車が四台というなかなかな大所帯。
まだ海水浴には早い時期だったので、着替えずに浜辺へ行くことにした。
「エリアスさま、いこ?」
「クラー! いこ!」
クラークくんと手を繋いで波打ち際に急ぐエリアス。
二人にはセリーヌさんがついていてくれているので、私とロイはシートを敷いてピクニックの準備。
「お、ローストビーフサンドだ!」
バスケットからサンドイッチをとりだしパクリ。
んまい。
「カリナ……」
「ほらロイも! あーん!」
準備中のつまみ食いは、お行儀的な方向で怒られそうだったので、ロイを共犯者にした。
ロイは『チョロイくん』なので、幸せそうな顔でパクリとローストビーフサンドを頬張っていた。
――――ふっ、流石チョロイくん。
波打ち際で波で遊んだり、砂遊びをしたりと海を堪能して、エリアスとクラークくんは疲れ果てて、浜辺のシートで寝てしまった。
「おぉ……今寝ると夜起きそう」
「ですわね。もう少ししたら起こしましょう」
とりあえずホテルまでは寝かせておいて移動し、到着したら起こすことにした。
部屋で目を覚ましたエリアスはまさかのしょんぼり。
まだ海にいたかったらしい。
明日もまた行こうねというと、しょんぼりしながらもコクリと頷いてくれた。
幼い頃のロイにそっくりな顔でしょんぼり。
「グハッ! めっちゃかわいい!」
エリアスを抱き上げて、高速で頬ずりしていたら、ものすごく顔を顰められた。
「やー! まま、きらい!」
「やだー、ママはすきー」
小さな両手で顔面を鷲掴みにされているが、攻撃力は無いので無視して頬ずりを続けた。
ロイが隣で何かもちゃもちゃと言っているが無視。
「ほら、エリアスが嫌がってるじゃないか。頬ずり高速スリスリは俺にしろ。なっ? な?」
完全に煩悩まみれだったので、無視でいい。
次話は、明日のお昼頃に投稿します。




