79:福岡県民、叫ぶ。
ロイと結婚してもうすぐ三年。
エリアスはすくすくと育ち……布おむつ姿で絶賛逃亡中。
「エリアス、待たんね!」
「やー!」
なぜかお風呂上がりは裸体でいたいらしい。
このところ簡単なおしゃべりができるようになった、と本人も認識したらしく、色んな主張をしてくるようになった。
ご飯のボイコットもそうだ。
野菜を食べない! という日もあれば、スープを飲まない! という日もある。
お肉は必ず食べるけども。
「……エリアス」
「あい」
そして、ロイが低い声でただ名前を呼ぶだけで、エリアスは逃走をピタリと止める。
ロイが怖いのか、私が舐められているのか。
たぶん、後者。
「はぁ。ほら、シャツ着て」
「いやっ」
跪いてシャツを差し出したら、プイッとそっぽを向かれてしまった。
がっくしと項垂れて名前を呼ぶと、エリアスが爆笑しだした。
「エーリーアースゥゥ」
「きゃははは」
なにが面白かったんだか。
後ろの方でもロイがくつくつと笑っている。
楽しそうで何よりだが、私は服を着て欲しい。
その後、十分ほど頼み込んでやっとこさ寝巻きに着替えてもらった。
着替えたら船を漕ぎだしたので、エリアスの寝室に連れて行くと直ぐさま眠ってくれた。
どうやら寝ぐずりハイだったらしい。
因みに、こちらではある程度の年齢からは子供でも一人部屋らしい。
ある程度の年齢の年齢がびっくりするほど早かったけれど、突っ込めていない。
「くそぅ、ワケワカメ! ワカメ食べたい!」
「わかめ?」
爆睡しているエリアスに布団を掛けつつ文句を言っていたら、入り口にいたロイに拾われてしまった。
こっちには海藻類が少なく、わかめや昆布はなかった。
海には生えているらしいけど、生えてるののどれがソレかとか、どうやって食べられるようにしているのかとか、わからない。
だから、食べられない。
この、たぶん目の前にあるのに食べられない感。
めちゃんこ辛いのだ。
「海藻の一種っ!」
「俺にキレるなよ…………あ、ハネムーンのところにあった港町にまた行くか? 地元の民に効けば何か出てくるかもしれないぞ」
「っ! ロイ、天才っっ!」
ずだだだだと走ってロイに飛びついたら、ロイまで思いのほか喜んで、私を抱き上げた。
「また休暇が溜まっている。三人で小旅行にでも出かけるか」
「うん!」
「んはは。名案を出した俺へ、何かしたくならないか?」
分かりやすすぎる。が、ノッてあげよう。
チュッと触れるだけのキスをすると、ロイが私の首の後ろをガシッと掴んできた。
深まるキス。
抱き上げられキスをしたまま、主寝室の方へと移動を――――。
「んぎゃぁぁ! まーまぁー!」
「「エリアスゥゥ」」
大人な夜の艶めかしい雰囲気は、エリアスの素早い夜泣きで中止を余儀なくされた。
次話は本日19時頃に投稿します。




