78:福岡県民、思い立つ。
二月十四日、朝イチでふと思い立ってアイスボックスクッキーを作ることにした。
チョコとプレーン生地で市松模様にしてみたり、渦巻き模様にしてみたり、マーブルにしてみたり。
色々な形のクッキーを作った。
「ハッピーバレンタイーン」
ラッピングしてロイに渡すと、きょとんとした顔をされた。
「お?」
「ばれんたいん、とはなんだ?」
「バレンタインないんだ? えっと…………そういう聖人……あれ? お菓子会社の戦略的な? んんん?」
ロイが意味がわからないと言う。
確かに! なんとなくでイベントに参加していたけど、よくよく考えるといみがわからないなと思い、同意したらなぜか鼻で笑われた。
「一般的な認識としては、女の子が好きな人にチョコレートとかを渡す日なんやけどね」
「…………去年も一昨年ももらってないぞ?」
「…………ですね」
去年も一昨年も、十四日が過ぎてから気づいたのだ。
当日を過ぎたら、なんかアウトな気がしてスルーしておいた、のだけれどロイ的にはとても不服らしい。
「貰えなかった二年の分も欲しい」
なにそれ可愛い!
ということで、クッキーを渡したあとキッチンに逆戻り。
うぉぉぉぉぉ! と、卵白でメレンゲを作り小麦粉とココアや砂糖類を混ぜ混ぜ。あとは食べる直前にオーブンで焼けばココアスフレの出来上がり。
さて、もう一品は何にしようか。
寒いし温かい飲み物とかがいいかなぁ。
「あ!」
少し固めの生チョコを作ることにした。
型に流し入れ、真ん中にマドラーをぶっ刺す。
固まるまでは二時間ほどはかかりそうなので、とりあえずスフレを焼いて、クッキーと一緒にロイに渡した。
「っ! ん!」
嬉しそうに美味しい美味しいと言いながら、食べてくれるのってとっても嬉しい。
「もう一品は寝る前にね」
「ん? わかった」
お風呂に入り、そろそろ寝ようかという時間。
主寝室の机の上には、私の作ったアイスボックスクッキーがわさっとおいてあった。
そしてエマちゃんが例の生チョコレートを持って来てくれた。
それと一緒に熱々のミルクも。
「ん? 寝酒じゃないのか?」
「ふっふっふ」
ニヤニヤとしながら、マドラーを指した。
「コレをね、このままミルクに浸けて、ぐるぐるぐる」
やってみせつつ、出来上がったホットチョコをコクリ。
「あ、めっちゃおいしい!」
「ん! 美味い」
味も見た目も普通だけど、工程が楽しい飲み物だ。
「カリナ、ありがとうな!」
ロイがとびっきりの笑顔だった。
こんなに素敵な破顔がみれるのなら、来年と言わずにイベント事のたびに、なにか用意しよう。そう心に誓った。
寝落ちしてました……。
次話は明日のお昼頃に投稿します。




