76:福岡県民、溶け合う。
副団長にカマかけしていたら、ちょっと本気で睨まれた。
これ以上は危険なのでそっとしておこう。
「ごめん?」
副団長が一人になったタイミングで、ロイから離れてこっそり話しかけたら、溜め息を吐かれた。
「こちらにも事情があります。どうか、静観を」
「わかった。ほんとごめんね」
「じれったい気持ちはわかります。お気遣いありがとうございます」
怒鳴ることも、誤魔化すことも出来たのに。副団長、大人だ。
静観するから、マルティーナを幸せにしてあげてね? と小声でお願いすると、当たり前だと言われてしまった。
「あはっ、ほんと副団長ってかっこよかね」
「……ふん。もっと早い段階で気付いて欲しかったですね」
「あははは!」
副団長と笑っていたら、眉間に皺を寄せたロイが、いつの間にか真横にいた。
「楽しそうだな?」
「うん。副団長に怒られとった!」
あははと笑いながら報告すると、ロイの眉間の皺がすっと解けた。
どうやらご機嫌は直ったようだ。
様々な貴族たちと社交は結構に気疲れした。
軽い立食のみだったけど、思ったよりお腹いっぱいだったので、屋敷に帰って着替えとお風呂を済ませて寝ることにした。
ロイはソファのところで軽食とワインを飲んでいる。
「フルーツもあるぞ?」
「あ、桃ちょこっと食べるー」
果物は別腹である。
じゅわっと瑞々しく程よい酸味、間違いなく高級な桃だ。
たまに缶詰とかの甘々したやつも食べたくなるけれど、あの味ってなかなか再現できない。
炭酸系の体に悪そうな色をしたジュースとかも飲みたい。
こちらにも炭酸はあるけど、なんというかあちらの炭酸ジュースがボディビルダーなら、こちらの炭酸水は小学生くらいなのだ。
「…………例えがいまいち分かり辛い」
ワイングラスを傾けて口をつけたままで、ロイが眉毛をヘニョンと下げていた。
「えー。じゃあ……鍛え抜かれた騎士と町中でチャンバラしとる子供?」
「なぜ人間に例えるんだ」
「ライオンと――――」
「っ、くくくく! ちがっ……」
どうやらロイのツボに入ったらしい。もしや笑い上戸なのかな?
そういえば、お酒を多めに飲んだ日はよくニコニコしてたなぁ。
「はは、確かに高揚しているな。こんなに幸せでいいんだろうか、とな――――」
ロイがグイッとワインを口に含み、唇をかさねながら押し倒してきた。
じわりと滲むようにワインが流れ込んでくる。
――――熱い。
「ん……ふ…………」
コクリ。
ワインを飲み下すと、唇に感じていた熱さが全身に広がり、まるでロイに染められているような気分になった。
ゆっくり深呼吸をしてアルコール混じりの息を吐き出すと、またロイが唇を重ねてきた。
何度も何度も触れ合い、貪り合う。
愛しい人と溶け合う幸せは、夜が更けても続いた。
次話は、明日の朝7時頃に投稿します。




