74:福岡県民、核心を突きたい。
笑うロイにぷりぷりと小声で文句を言いつつ、お屋敷の玄関に向かった。
入り口で家名を確認され、中に通された。
大きな広間には既に五十人程の人たちがおり、思い思いに過ごしていた。
出席者はかなり上の役職を得ている方々や騎士団関係者ばかりで、男性が多めだった。
「おほぉぅ。なかなかの著名なオジサマ方がお集まりぃ。ハゲしく眩か。みんな油塗って磨いとるん?」
「ブフッ…………っ、カリナ! 小声で面白いことを言うな!」
なんであんなにツヤツヤと光ってるんだろうか。ナニが、とは言わないが。
ロイが肩を震わせながら歩いているが、沸点が低すぎやしないだろうか。挨拶時には吹き出すなよ? と注意しておいた。
誰のせいだと怒られたけど、オジサマたちのせいだ。たぶん。
「カリナ、もう来ていましたの?」
マルティーナの声が聞こえたので振り返ったら、吹き出すかと思った。
マルティーナが左手でがっしりと副団長の手首を掴んで歩いてきている。歩いているというか引きずっているというかだけど。
「何してるの? マルティーナ」
「だって手を離すと逃げるんですもの」
副団長は、完全に苦虫を噛み潰している顔だった。
マルティーナは一切気にしていないが、これ大丈夫なんだろうか。
「マルティーナはこういうやつだ。人の話を何も聞かないし、配慮もしない」
「ロイは相変わらず厳しかねぇ」
まぁ、マルティーナの自業自得だから別にいいけど。
それよりも、副団長が気になる。
嫌なら嫌とハッキリと言うし、来たくなかったら来ないタイプだ。
国王陛下からの命令だとしても抜け道を必ず探すし、直談判しに行くくらいにはメンタルも強いし、話を聞いてもらえるほどに信頼も厚い。
なのに、一緒にいるということは?
「副団長」
「なんですか?」
「素直になりーよ」
「…………なんのことです?」
しらぁっとした顔で言われたけれど、眉間の皺が深まったので確定でいいと思う。
「副団長はさ、マル――――」
「やあ、皆さまお揃いで何やら楽しそうですな」
副団長の核心ザクザクしてみようかと思っていたのに、眩いオジサマの一人に話しかけられてしまった。
――――チッ!
真面目に社交しつつ、チラチラとマルティーナと副団長をガン見。
流石に社交中はにこやかな対応をマルティーナにもしている。腰とか抱いちゃってるし。マルティーナは頬を染めていて可愛い。
やっぱり間違いない! ……気がする!
「カリナ、なんでそんなにハンスを見つめている。俺だけを見てろ」
耳元で、お腹の奥底がゾワゾワするほどの低い声で囁かれた。
腰が砕けるかと思った。
次話は本日21時頃に投稿します。




