73:福岡県民、絞められる。
ぐえぇぇっと口から断末魔を漏らしながら、絞められている。お腹を。
コルセットって必要なの? と聞いたら、全員が口を揃えて必要だと言う。
こうなったら諦めが肝心だ。
「緩めにしておきますので」
――――緩めとは。
コルセット無しで! と言いたいけれど、流石に駄目人間感が酷いのでグッと我慢。
「奥様、冷たい飲み物です」
「ありがどぉ」
メイドさんから飲み物を受け取って休憩中に、ロイが着替え部屋に入ってきた。
「どったの?」
「ん、母から宝石が届いた」
ロイが差し出して来たのは、本気で引くほどの豪華でジャラジャラとしたブルーサファイアのネックレスと、大粒のブルーサファイアのイヤリング。
元の世界でいう、映画の祭典とかでセレブたちがブランドから貸し出された数億円のジュエリー的な見た目だ。
「…………国宝?」
「いやまぁ、否定はできないが」
そこは否定してくれよ、と切に願ったが叶わなかった。
「大元は国宝で、何代か前の我が家に下賜されたものだ」
「……なんでコレがここに来るん?」
「昨日、父と王城で会ってな。カリナが着るドレスの色を聞かれたんだが……」
お義母さまの暴走か。
確かに、スカイブルーから濃灰へのグラデーションドレスと合う。合うけども。
ホイッと送りつけないでほしい。しかも直前に。
ロイ曰く、逃げられないようにだろうとのこと。
お義母さま、小狡い。
結局、ロイの家を代表する宝石で、私がそれを着けることによって、『新しい嫁は侯爵家に受け入れられている』という印象を周りに与えられると言われて、着けることになった。
「ん、似合うな」
「うーん。ありがと」
ちょっと生きた心地がしないけども。
準備を終わらせ、馬車に乗り込む。
「あぁぁあぁあぁ……何度乗っても尾てい骨に響ぐっえっ…………」
「おっ……石踏んだな」
ガタンと馬車が揺れようとも、ロイにダメージなどない。
もしや、馬車が進化しないのはコイツのせいじゃなかろうか。コイツが平気だからサスペンションとかいう機能のやつが開発されないんじゃなかろうか。
そんな無茶苦茶な超理論を考えることで、お尻へのダメージを気持ち軽減した。
三十分後、夜会の会場である侯爵家に到着したときは、へっぴり腰になってしまっていた。
「ちょいまち」
馬車から降りてすぐに歩き出そうとするロイを止め、反り返りのストレッチなどをする。
なぜかロイに爆笑された。
コルセットがキツい苦しいと言っていたわりに、柔軟体操できるほどに動いていたから、らしい。
服を着て自由に動けない方が変だと思う!
次話は明日の朝9時頃に投稿します。




