71:福岡県民、大笑いする。
ロイと二人でベッドに寝そべって、他愛もない話をする。
ピッタリと身体をくっつけ、足を擦り合わせたり、手を繋いで指を絡めたり。
なんの前触れもなくキスをしてみたり。
本当に久々のイチャイチャ。
徐々に二人の熱が上昇しだす。
息が少しだけ乱れたロイに組み敷かれた。
「また?」
「ん。何度でも。だめか?」
「よかよ」
しっかりと休めたかというと、身体はそうでもないけれど、心の中からは重みがなくなった。
他人からの愛に依存するのは駄目というか、少し危ないんだろうけれど、愛している人に愛されるのは、とても満たされる。
翌日には乳母さんが来てくれた。
セリーヌさん、一歳の息子クラークくんと共に住み込みで働いてくれるそうで、流石に引っ越しは来週とのこと。
えらく素早く見つけて来たなと思ったら、元々ロイが打診してくれていたらしい。
もしや雇う雇う詐欺をやらかしていたんではなかろうか。
何だか色々と申し訳なくて謝ったら、逆に感謝されてしまった。
「いつか必ず頼むことになるから、と今まで何もしていないのにお給金をいただけていたので……」
「ぬぁっ――――」
ロイがアセアセしていた。
そしてモゴモゴとなにか言っているが、感謝しかない。
「ありがと、ロイ」
「っ、ん!」
妙に低めの声で返事して、今日はないはずの「執務に戻る!」とか言って、足早に部屋を出ていった。
「申し訳ございませんっ! 旦那様のご機嫌を損ねてしまったでしょうか⁉」
「大丈夫、大丈夫。照れて逃げただけだよ」
まったく。可愛いったらありゃしない。
クラークくんはとても活発な子で、屋敷を新しい遊び場だと判断したらしい。
お尻を振り振りしながら歩き回って、色んなところを探検している。
「アハハハ! イスッ、イスに挟まってるっ!」
なぜかキッチンの作業用イスの下に潜り込んで、お尻を嵌め込んでいた。
本人はギャン泣きだが、大人たちは大爆笑だった。
「セリーヌさんとクラークくんが来てくれて、本当に良かったぁ!」
「こちらこそ! 主人まで雇っていただき、本当に感謝しております」
ご主人のことを聞いたら、庭師ではあるものの組合から斡旋された仕事が単発のものしかなく、正規での雇先を探していること。セリーヌさんたちがここに住み込みになるので、ご主人は一人暮らしになるとのことだった。
ならばと我が家で雇うことになったのだ。
我が家の庭師はかなり老齢なこともあり、執事のフランクさんが手伝いをしていたので、諸手を挙げて賛成された。
「カリナ様がこられて、ここも随分と貴族の屋敷らしくなってきましたな」
どうやらフランクさんは使用人が増えてとても嬉しいらしい。
確かに、最近は屋敷が賑やかで楽しい。
「あっ! こら、クラーク!」
「アハハハハハ!」
――――うん、楽しいっ!
次話は明日のお昼頃に投稿します。




