63:福岡県民、実感が湧かない。
ロイのストーカー疑惑は一度横に置くとして。
ロイの言う妊娠の兆候を聞いてみた。
「まず、最近の睡眠時間が長い。ずっと眠そうにしている」
いつも六時間程度だけど、最近は八時間くらいは寝ている。
ただ単に疲れてるだけだと思うけど?
そして寝すぎて、逆に眠気が残っているというか。
「それから、よくめまいを起こしている」
そいや、最近よくふらつくって話しした気がする。眠気のせいかと思ったけれど?
「体温が少しだけ高い」
日中は気温が高いのに夜はかなり冷え込みだした。あまりにも寒いので、先週ぶ厚い布団に替えた。そのせいじゃないのかな?
「胸が張っている。はじめはサイズが変わったのかと思ったが」
「お、おおん」
確かに。最近、ブラがなんか小さくなったなぁとかは思っていた。
「それらと先月の障りの件での判断だ。総合的に見て、妊娠の可能性が高いそうだぞ」
「おほぉう。マジか」
自分では違和感として認識していなかった事。それなのにロイには、違和感だったらしい。
私が鈍感なのか、ロイが敏感すぎるのか。
――――どっちもやか?
ほむむん? と考え込んでいたら、絞め殺しにかかってきているロイが、ションボリとした空気を醸し出した。
そう、私、未だにロイに絞められているのだ。
てちてちとロイの腕をタップしているが、完全スルーである。
「カリナ、俺はとても嬉しいんだ。カリナは…………もしかして、あまり嬉しいことではなかったか?」
「あ! いや! とても嬉しいです! はい!」
ロイが気にしてたのはそっちか! と慌てて答えたら、物凄いジト目で見られた。
違うところが気になって気になって気になって。
テヘッと笑って誤魔化したけれど、ジト目のまま。
「無理に合わせていないか? 俺はカリナの本当の気持が知りたい」
「え、あ……いや。なんというか、実感が全く無いです。はい」
まぁ、結果的に妊娠はするだろうなぁ。そんな感想のみなのだ。
嬉しいは嬉しい。子供、好きだし。
驚くほどに実感がない。
ロイと子供についてとか話し合ったことなかったなぁ、と思っていたら口から漏れ出ていたらしい。
ロイがビクリと震えた。
「ん? どったの?」
「あ……いや。その毎回……孕んでくれと願っていた」
「…………おぉぅ」
「引くなよ!」
「おぉぅ」
暫く、『おぉぅ』としか言えなかった。
ロイの愛が、思っていたよりもヘビーだった件で。
実感は、もっとわかりやすい変化が出てきたら湧くんじゃないかな? とか、適当に話を終わらせた。
それよりもどんな子供だろうか、と未来予想をしたりしてみる。
「俺は女の子だと思う」
「えー。男の子がいー」
「カリナの子供だ。絶対に小さくて可愛い」
「いや、ロイの子供だから、主張の激しい顔のイケメンでしょうよ!」
「……主張の激しい顔? それは、褒めてるのか?」
「めっちゃ褒めとるし!」
――――脱・扁平顔!
次話は19時頃に投稿します。




