57:福岡県民、抱えて運ばれる。
夕方、ロイが帰ってきたので、玄関でお迎えしていると、なぜか抱え上げられて、部屋に連れ込まれた。
「ちょぉぉ?」
「話がある」
何かと思えば、食堂に団員さんたちへの差し入れをしたことだったらしい。
「ウチが動かしていいって言われとる金額内やったと思うけど?」
「そういうことじゃなくて…………」
じゃあ何なんだと聞いたら、まさかの私の手作りしたものが他の男に食べられたのが気に食わなかったらしい。
知らんがなと言いたい。言ったけど。
そもそも、以前から騎士団の食堂のお手伝いしてたし、今回のはシェフさんもフランクさんも食べているし。
「……」
「やきもちか!」
「ん」
可愛いので撫で撫ではしてしまったものの、軽くベチベチと叩きもした。
そもそも、差し入れは私のワガママでハネムーンをさせてもらったからなのだ。ロイが二週間近く休むために、みんなが色々と動いてくれた。
とくに副団長はかなり。
「ねぎらいと、感謝したかっただけやん!」
「っ……ん」
「なん?」
ロイがぎゅむむと抱きついてくるので、脇腹をドスドスとグーパンしていたら、ベッドに押し倒された。
「ロイさん?」
「ちょっと……幸せな気持が…………違うところから迸りそうだ」
「ヲイ」
――――誰が下ネタを言えと言ったよ!
結局、このあとエロエロタイムにより、夕食は真夜中になった。
艶艶しい肌と笑顔のロイが恨めしい。
そして、シェフさんは温めるだけでいいように準備してくれていて助かった。
わりと料理は出来る方なので、なぜか食事の時間がズレるときは、自分で温め直すので規定の時間で終業して大丈夫だと伝えているのだ。
「あー、さっぱりコンソメが胃に染み渡るぅ」
「ん! うまい!」
流石に真夜中のチキンソテーは胃に来そうだから、お皿ごとロイに渡すとどえらく心配された。
なぜに食いしん坊キャラとして定着しているんだ?
「カリナ、いつも食べ物の話のとき、何よりも目がキラキラしてるし。宝石とか貰ってもあんまり嬉しくないんだろ?」
ぐうの音も出ない。
宝石は、なんか申し訳ない気分になる。
だって高いし、着けて行く場所とかほぼないし。
「告白の腕輪も突き返されたし」
「告白の腕輪?」
なんぞや? そんなもの記憶にもないんだけど。
「覚えてない…………だと⁉」
「おん。なんも」
「初デートのときに、宝石店に行ったじゃないか」
「――――あ!」
思い出しはした。
だけど、『告白の腕輪』とは結局なんぞや。あれにそんな意味が込められていたのか?
「自分の目や髪の色に近い宝石をあしらった腕輪を贈るのが慣わしなんだ」
「ほへぇ。なるほど」
だからロイはあんなに焦ったり凹んだり戸惑ったりしていたわけか。つか、腕輪ひとつで何も言わずに告白したつもりになってたのか。
「あのとき、好きともなんとも言われとらんし、よくわからん関係やのに、高級そうなもの渡されても、嬉しくもなんともなか。逆に怖い」
「……それは、カリナと付き合うようになって、なんとなくわかってきた」
ならまぁ、しつこくは言わないでおこうと思いつつ食事を終わらせた。
次話は明日の朝7時頃に投稿します。
(申し訳ございませんっっ! メンテナンスをすっかり忘れて更新時間を宣言していました)




