56:福岡県民、賛成する。
マルティーナを雑用係として雇うことに関して、ケンカ?
なぜに?
「アレと一緒に働きたくない」
「ポンコツだから?」
見た感じ、たぶん、ポンコツ。
「一応、仕事は出来るのですよ。王城で行儀見習いもしていましたし」
「ほへー。知らなかった」
行儀見習いは、あれだな。あれ……上級侍女とかで、王族に仕えたりしつつ、玉の輿狙いのやーつ。
思ったことをポロリと零したら、ハッキリと言い過ぎだと怒られた。
「めんご!」
しかしまぁ、仕事できる子ならいいじゃんよ? と思ったのだけれど、ロイ的にはやっぱり婚約者時代のあれやこれやがネックらしい。
あと、未だに私たちの間を認めておらず、何かと邪魔してくるのも。
「えー? でもアレはパフォーマンスだから、スルーでいいんじゃない?」
「パフォーマンス?」
どうやら、ロイは気づいていなかったらしい。
ロイが鈍感なのか、マルティーナの演技がとても上手いのか……。
でも、私と副団長は気づいてるしなぁ。
やっぱりロイが鈍感なパターンだろう。
「私は賛成だよ」
「私もマルティーナを推奨します」
そこでふと気になった。
なぜに副団長はマルティーナ推しなんだ? と。
だって、あの子の扱い、わりと面倒そうにしているのに。
「何かをやらかした時、叱りやすいので。基本的に、命令しやすいですし」
ドSな理由だった。
さすが副団長!
「あぁ?」
ものっそい睨まれた。
新雑用係問題は二人にお任せして、私は屋敷に逃げ……げふんげふん。あれだ、進捗が気になるから、屋敷に戻ったのだ。
「おかえりなさいませ! ジャムの下準備、もうできてますよー」
エマちゃんがとびきりの笑顔で迎えてくれた。ひしっと抱きついて癒やされた。
手を洗って手伝えとか、苦しいとか、なんか色々言われたけどスルーで。
タルトやフルーツサンドに使ったオレンジの皮を無駄にしないため、マーマレードを作ることにしたのだ。
皮だけだと苦味が強くなりすぎて味気ないので、普通に果肉がついているオレンジも五玉使う。
皮からワタを取ってもらったり、皮だけ煮沸してもらったり、細切りにしてもらったりと、下準備をお願いしていた。
「じゃあ、あとは重さを計って、砂糖はそれの半分よりちょい少なめくらいね」
分量が雑だと言われたけど、それで覚えちゃっているものだから、なんとも言えない。
砂糖を分割して入れたり、グツグツと煮込んだりで、水分がなくなったら完成。
フルーツサンド作りで出たパンの耳をグラタン皿に敷き詰め、フレンチトーストに使うような卵液を作って流し込む。
半日程度寝かせてから翌朝に焼いてもらってマーマレードと一緒に食べるのだ。
「ぬふふふ。大量大量。まだまだ余ってるねぇ」
明日は何を作ろうかなぁと思いつつ、いちごをこそっとつまみ食いした。
エマちゃんの口にも突っ込んで、共犯者作りは忘れずに。
次話は本日19時頃に投稿します。




