55:福岡県民、差し入れに行く。
ちょこっとつまみ食いしたあとは、オレンジスライスをトースターで……というか、オーブンを低めの温度にして水分を飛ばす。
湿っぽさがなくなったら、そのまま冷ますと、カッチカチになる。
あとは溶かしたチョコレートに半身だけ漬けて、冷やせば完成!
エマちゃんにそれらの工程をおまかせしている間に、私はフルーツサンド作り。
ホイップクリームをしっかりと泡立て、ふやかしたゼラチンを混ぜる。
これをすると、泡立てたクリームが何時間経ってもダレない! ヒャッホイ!
耳を切り落とした食パンに、ホイップをぼったりと落とす。
シェフさんが切ってくれた果物たちを並べて、またホイップを塗って、もう一枚重ねる。
パラフィン紙で包み、暫く放置して馴染ませる。
あとは食べる前に斜めにカットするだけ。
「よし! フルーツサンドできた!」
「こちらもショコラオランジュできました」
タルトは焼き上がっているので、少し休ませてからカスタードを敷き詰め、フルーツをふんだんに盛るだけ。
「タルトを仕上げたら、ショコラオランジュとフルーツサンド持って騎士団に差し入れしてくるね」
「わぁ! きっと旦那様が大喜びされますね」
「だといいなぁ」
エマちゃんとルンルンでタルトも仕上げた。
差し入れを沢山入れた籠を持って、騎士団に来た。
結婚式前から合わせると二週間ほど来ていなかっただけなのに、とても懐かしいような気がする。
「やっほー」
まずはキッチンに顔出し。
団員さんたちへの差し入れ分を置いてきた。
全員に深々と礼をされて、なんだかいたたまれない気分になった。
「失礼しまーす」
いつものノリで、ロイたちの執務室をノックしてすぐに扉を開けた。
「「……」」
「今度はロイが攻めなん?」
ロイが副団長と向かい合って、ネクタイをグイッと引っ張っている瞬間だった。
「……なぜそうなる」
「いや、俺様攻めというか……オラオラ攻めというか…………まぁ、あれです。妄想してすんませんした!」
副団長にげんこつはされたけど、許してもらえた。たぶん。
「何しに来られたんですか?」
「言い方よ……。差し入れー」
「あ、美味しそうですね」
「だっしょ⁉」
副団長がいちごサンドを手に取りパクリと食べた。
目を見開いて美味しいと言っていたので、本当に美味しかったのと、好きだったらしい。
いつもは割と適当に『たべれますね』とかいうのだ。
「で、二人は何でイチャイチャしてたん?」
「ケンカしてたんだが?」
「お? なぜに?」
私の出勤日が減ったので、雑務仕事をする人間を雇いたいと、副団長が言い出したらしい。
しかも、雇うのであればマルティーナを、と言うものだから、ロイがキレていたらしい。
――――なるほろ!
次話は、明日の7時頃に投稿します。




