50:福岡県民、落書きをする。
海の町滞在の二日目は、砂浜デートと少しの水遊びを堪能した。
水着という名のワンピースが、海水で濡れて身体に張り付いて気持ち悪い。
ロイがその姿に、大興奮していたのは……まぁ、スルーした。
「あっちの世界の水着とか下着ば見たら、卒倒しそうやね」
「…………」
無言で『説明しろ』と言わないでほしい。何でか察することが出来てしまった。
下着の形はあまり変わらないが、柄や色合い、セクシーさがかなり違うこと。
水着は、ほとんど下着と同じ形のビキニやタンキニ、こちらからすれば超絶ミニのワンピースタイプもある。
そんな説明をすると、ロイが砂浜にしゃがみ込み、両手で顔を押さえていた。どういう感情なのだろうか?
モジモジしているロイを放置して、落ちていた枝で砂浜に落書きして遊んだ。
「なんだそれは?」
「え? ねこ」
猫の顔を普通に書いたのだか、なんの生き物かと聞かれてしまった。わりと可愛く描けているはずなんだけど。
「あ、いや。可愛い。この世界にはそういう絵柄のは見たことがないぞ」
「え?そうなの?」
適当にライオンを描いても可愛いと言われた。
試しに自画像を描いてみたら、なぜか爆笑された。まじで、なぜだ。
『ロイ♡カリナ』という、痛いこともやってみたら、波が来て消し去って行った。
ロイがいじけて、もう一度書いてくれとか謎の懇願をしてくる。
「あはは! ロイは、可愛かねぇ」
手の砂を払って、ロイの頭をワシワシと撫でると、嬉しそうにしていたのが、更に可愛い。
なんやかんやで、海を堪能しまくった。
海の町滞在の三日目は、町中を巡ることになっている。
少しゆっくりめに起きて、遅めの朝ご飯を食べてから、ロイと二人手を繋いでお出かけ。
まぁ、厳密には執事も侍女も後ろからついてきているから、二人きりではないけども。
「二人きりが良かったのか?」
「そういうわけじゃなかけど……」
「苦手?」
「そげなん感じかなぁ」
なぜに疑問形だと聞かれたけれど、なんとも答えにくい。
そもそも後ろにいるし。
ロイは本当に平気なんだなぁと妙に感心した。
「たぶん、まだ慣れんだけなんやと思う」
きっと徐々に慣れていくんだろうなぁ。と思いつつ歩みを進めた。
「あ、おみやげ屋さん?」
「ん。立ち寄ろうか」
貝殻や珊瑚などで作られた特産品が売ってあるお店を見つけた。
副団長やジョージたちにお土産でも買っていこうかな、と思っていた。
「あいつらは、干し肉とかのほうが喜ぶぞ?」
「……」
なんだろう。こういうところ、やっぱり男の人だなぁ。
とりあえず、適当に返事しておいた。




