48:福岡県民、ヤブをつつく。
ボートに乗って、海の上をゆったり移動。
私はゆったりだけど。
ロイは、わりと忙しそうだ。
腕と胸筋と腹筋と………………。
「筋肉まみれめ」
自分の横腹と下腹の贅沢なお肉を思い出して、軽くイラッとしてしまった。
二時間ほど海上を楽しんだあと、砂浜に戻り水分補給と軽食にサンドウィッチを食べた。
到着したのがお昼を随分と過ぎていたので、既に夕日が沈みつつあった。
「きれいやねぇ。太陽はどこの世界でも太陽なんやかぁ」
なんとなく思ったことをポソリと呟いただけだった。
なのに、ロイがとても焦った顔をする。
私が消えそうだと。
「消えんばってん?」
「ん。なんとなくな…………」
すなはまに座り、後ろ抱きにされて、沈む夕陽を二人で眺め続けた。
肌寒くなったのでホテルに帰った。
レストランでは、お腹がはち切れそうなほど海産物を食べ、幸せいっぱいだ。
お風呂はもちろん一人で入った。
一人で入るお風呂は、控えめに言っても、最高である。
「新婚旅行じゃなかったか?」
「新婚旅行で毎夜致すと思うな!」
「――――⁉」
ロイが、ここ一番の驚愕顔をしていたが、まさかの毎夜エロエロタイムになると思っていたのか?
どんだけスタミナあるんだ。
「二時間くらい、ボート漕いでたよね?」
「ん。楽しかったなぁ。明日も行くか?」
「いくー! ……じゃなくて!」
しんどいとか、腕が……とか、腰が……とかないのだろうか?
え? ないの? すこぶる元気?
…………すこぶる元気なのぉ。よかったですね。
「何故、そんなに残念そうなんだ」
「……き、きのせいやと思うよ!」
本気で残念に思ったなんて言えない。
あれだ、エロエロより、寄り添って他愛もない話をしながら眠る、心の距離を近付けたいのだ。
……半分ちょっとは。
様々な思惑を誤魔化しつつ、しどろもどろに説明したら、ロイがありえないほど感動した。
抱きしめられ、何度も何度も柔らかいキス。
そして、愛の言葉の数々。
「んー、もう、しつこかってば…………」
「カリナが眠るまで囁やき続ける」
「ロイって、ストーカーの一歩手前な気がする」
「ストーカー?」
どうやらこの世界には、ストーカーという概念もなかったらしい。
ベッドの上で、なぜか、正座をさせられて説明と謝罪を繰り返した。
そして、どういった被害があるのか、犯罪者の行動や事件はどんなことがあり、統計的に多いのは、罪状などはどうなるかなど、事細かに聞かれた。
聞かれても罪状とかはよくわからないから、結構適当に言ったけど。
ロイはとても満足そうだった。
「何が面白かったんね?」
「つきまとい行為はどの世界でも一緒なのだなぁとな。あとはカリナの世界での犯罪と罪などの重さを知ることは、こちらの世界の発展に役立つだろう?」
ロイが驚くほどに真面目だった。
なんか、色々とエロエロ大魔神扱いして申し訳なかった。
「カーリーナー?」
思いっきり、口が滑った。
驚くほどに、ヤブヘビだった。
次話は、明日のお昼頃に投稿します。




