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福岡県民、方言丸出しで異世界に行ったら、言葉が通じらんかった件。 〜騎士団長に溺愛されとるのはよかけど、なんでか方言で話すごつゆわれます〜  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中
第二章:福岡県民、異世界で結婚する。

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44/86

44:福岡県民、真相を知る。

 



 ベッドから出て、立ちすくむロイの横を通り過ぎ、ソファに座った。

 横をテシテシと叩いて座るように言うと、ロイがこくりと頷き座ってくれた。


「そんなに酷いガヴァネスだったの?」

「っ……ああ」


 幼いロイは、端的に言って天使だった。

 クリクリの頭に、零れ落ちそうな宝石のような瞳。

 聡明かつ素直だったと聞いている。


「毎日、可愛い可愛いと……撫でられ、抱きしめられ、体中にキスをされていた」


 乗っけから聞いていない情報が満載すぎる。

 私が聞いたのは、『十歳の頃、ガヴァネスに酷い折檻を受けて、三ヶ月入院した。身体的にも精神的にも、浮上するまでに一年以上掛かった。ガヴァネスがローザリオと呼び続けていた事から、名前を呼ばれることに恐怖を覚えるようになった』、ということだけだった。


「確か三十手前で、子供が出来ない身体だから、俺を我が子のように思っているとか言っていた」


 初めは、だからこそ教育に熱心なのだろう、と思うようにしていたらしい。

 何か失敗をする度に、鞭で背中やお尻を叩かれていた。

 手の甲を叩かれたという学友はいたが、そのガヴァネスは『見えるところに傷を付けるのは、可哀想だから』とのたまったそうだ。


「可哀想…………ぉん」


 背中やお尻はもちろん、時には太股や胸を叩かれることもあったらしい。そんな日々を三年ほど耐え、ロイは思春期を迎えた。


「段々と、学友たちから聞くガヴァネスとなにかが違う、と気づき出したんだ。そして、反抗した。それからだった……」


 目付きが悪いと殴られる。

 言葉遣いが乱れていると殴られる。

 遊びに行く暇があるのなら学べと殴られる。

 一問でも間違うと殴られる。


「ある日、ダンスの授業で……胸を押し付けられ、身体中を触られた。気持ち悪くて、少し後退りして離れたんだ」


 不躾すぎると、顔を殴られたらしい。鞭の持ち手で。

 跪け、靴にキスをしろ。そんな要求をされ、飲めないと断ると、更に殴られた。

 押し倒され、服を脱がされ、全身を鞭で打たれ、腹を蹴られ、手をヒールで踏み潰され、足は変な方向に曲げられたそうだ。


「っ……酷い」

「ん」


 ロイが俯き、ブルリと震える右手を、自身の左手で押さえ付けていた。


「何で…………そこまで耐えたんね?」


 あまりにも理不尽すぎる。

 その頃のロイならば、本気で反抗できる体力も知識もあったはずだ。


「あの女は、王族の一員であり…………ハンスの教育係も担当していた。俺が無抵抗ならば、ハンスには丁寧に接してくれると約束していたんだ」

「ロイ……」

「陛下の妾だから、誰も逆らえないものだと思っていた」


 ――――おっふ。陛下、女の趣味悪っ。


 かなり失礼なことを考えていたら、ロイがクスリと笑った。


「あぁ、俺もそう思う」

「…………口から出とった?」

「ん」

「ご内密にお願いシャッス」


 ロイが楽しそうにクスクスと笑い出し、抱きついてくる。

 私の肩に顔を埋め、「ありがとう」と呟いた。


「どーしたと?」

「カリナのそういったところが、とても愛おしい。カリナの強さが羨ましい。聞いてくれて、ありがとうな」

「よくわからんけど、どういたしまして?」

「ん」


 未だに『ローザリオ』と呼ばれると、吐き気と身震いがするけれど、いつか平気になったら私に呼んで欲しい、と柔らかな笑顔でお願いされた。

 私は、そう遠くはない未来に、その日が来る気がしている。




次話は明日のお昼頃に投稿します。

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