39:福岡県民、令嬢を利用する。
式のあとは、チャペル併設の庭園で立食パーティー。
会場内をロイと練り歩き。
なぜ、練り歩きか? それは、しずしずと歩かされているから。
「閣下、おめでとうございます」
「ああ。ありがとう」
閣下って聞くとニヤニヤとしてしまうのは、日本人のサガ。仕方ない。
「若くて美しい奥様で、実に羨ましい」
「……ははは」
「まぁ! お褒めいただき、ありがとうございます」
褒められた気はしないけども。
とにかく、若いと褒められるが、それ以外言うことがないのだろうか。
あれか、平面な顔立ちの呪いかな?
「ちょこんとした可愛らしい鼻、小さくてぷるんとした唇、黒くて艷やかな髪、どれをとっても魅力的だぞ?」
練り歩きつつ、小声でプチプチと言っていたら、むちゅーっと頬にキスされた。
辺りから黄色い歓声が飛んできた。
ロイが甘々な姿が珍しいらしい。
――――いつも甘々なんやけどなぁ?
「しゅっ、出席してあげましたわよ! 感謝なさい!」
ぽやーっと考え事をしていたら、ズザザザザッと派手派手しい女性が目の前に飛び出して来た。
目に刺さるような鮮やかなオレンジ色のドレスを着たマルティーナ嬢。
「マルティーナ、ありがとー」
雑に返事をしたら、更に照れてツンとそっぽを向いた。
この子、完全にツンデレだ。
だがしかし、この世界では『ツンデレ』という概念がないらしく、ただのドギツい性格の女性という扱いになるらしい。
どんまい。
「マルティーナ、料理とかスイーツとかは食べた?」
「へ? 食べてませんが?」
「私の考えたものがいっぱいあるから食べてみてね」
まぁ、『私が考えた』は語弊があるけど、たぶんバレないしいいだろう。というズルい考えのもと、知名度上げにマルティーナ嬢を利用してみる。
この子、わりと影響力を持っている。
「そっ、そこまで言うなら、しかと味の批評をして差し上げますわ! 覚悟なさい!」
マルティーナ嬢が立ち去り際に小声で「お二人の人生にとって最良のこの日を心よりお慶び申し上げます」と呟いた。
「真面目やねぇ」
「何しに来たんだろうな?」
――――いや、招待状出したからなんやけど?
ロイ的には招待したくなかったらしい。が、私は友達のつもりなので、とりあえず送ってみた。たぶん来てくれるだろうなぁとは思っていた。
「つもりで、とりあえず、なのに友達なのか……」
「そこはあれ、特殊な関係なので」
「特殊な関係は、俺とだけ築けばいいと思うが?」
今度は唇にねちっこいキス。
マルティーナ嬢に嫉妬するロイ。
ロイはやっぱり可愛らしい。
先程よりも大きめの黄色い歓声を浴びながら、イジけているガタイも見た目も良い男の頭を撫で撫でしておいた。
次話は、本日21時頃に投稿します。
活動報告に、カリナ、ロイ、ハンスのイメージを投げています。気になられる方はちらっと覗いてみてね(*´ω`*)




