表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/86

3:福岡県民、暴言を吐く。




 団長と副団長に大人だと告げるはめになった。

 団長は、凄く怒っている。

 私が嘘を吐いていたから、と。

 だってそうしないと、ここの世界では生きていけなさそうだったから。


「君が大人だと知られたら、どうなっていたと思う?」

「……どう?」

「男なんだぞ」

「はあ……」


 なにが言いたいのか分からずに、気の抜けた返事をしてしまった。


「身の危険を感じろと言っているんだ!」

「へ?」

「貴族とはいえ、飢えた男たちなんだ。何かあったらどうする!」

「いや、大丈ぶ――――」

「大丈夫じゃないから言っている! もう、君をここに住まわせるわけにはいかない」

「っ! …………はい」


 半年前から、いつかなにかあったときのために節制はしてた。だから、たぶんちょっとの間は暮らせる。

 新しい働き口探さないと。

 すぐに出ていきますと言わなければならないのに、声が出ない。喉が締まって苦しい。


「っ、ぁ……ぅ」


 ぽろりと涙が零れた。

 仕事上で泣くなんて、初めてだ。

 泣いても何の解決にもならないのに。

 相手にとっては迷惑なだけなのに。

 涙は止まらない。


「ロイ、お前……」

「は? お、俺が泣かせたのか⁉」

「な、ないでまぜんっ」

「「泣いてるが……」」

「だいでだいっ!」

「「えぇ?」」


 泣いてないって言ってるのに、二人とも泣いてると言う。

 袖でぐしぐしと目元を擦っていたら、団長に手首を握って止められた。


「擦るな。傷になる」

「っ、はい。ごめんなさい。……明日、出ていく」

「「は⁉」」

「荷物そがんないけん、大丈夫」

「大丈夫なわけあるか! 馬鹿者が!」

「っ! 怒鳴らんくていいやん! 馬鹿ぁ! 団長のばかぁぁぁぁぁ! ハゲェェェェ!」


 団長の膝上から飛び降りて部屋から飛び出した。暴言を吐き捨てながら。

 すれ違う人たちが驚きながらも避けてくれる。

 大丈夫かと声掛けしてくれる。


 ――――優しい人たちばっかりやもん!




 部屋に飛び込んで、大きなボストンバッグに洋服や少しだけ買っていた雑貨などを詰め込んだ。


「カリナ嬢!」


 部屋のドアが、外れた。物理的に。

 メギバキと木の扉が割れる音が聞こえて、団長が部屋に飛び込んできた。


「話は終わっていない。執務室に戻って来なさい」

「…………やだ」

「カリナ嬢!」

「やだってば! 出てくけん、ほっとってよ!」


 団長がフーフーと肩で息をしたあと、何度か深呼吸をした。

 備え付けのテーブルにダンと手を置くと、ゆっくりとイスに座り、正面に座るように言われた。

 ちょっと怖かったから、仕方なく従った。


「カリナ嬢、ちゃんと話し合おう。落ち着いて、俺にわかるように話してくれ」

「……出てく」

「はぁ……」

 

 団長がテーブルに肘をついて頭を抱えてしまった。


「誰も出ていけとは言ってない」

「住まわせないっち言ったやん。出てけってことやろうもん」

「っあ、そうだが……そうじゃない」


 はぁ、と大きな溜め息を吐かれた。


「意味わからん! 別の仕事探すからよかです。出ていきます」

「ならん!」


 怒鳴られて、ビクリと体が震えた。

 

「だ、団長? 何かあったんですか?」


 部屋の入口から数人の団員さんたちが覗き込んで来ていた。

 ドアが破られていたり、怒鳴り声とか聞こえたから心配してくれたんだと思う。

 ほらね、優しい人たちばっかりやん。


「……任務に、戻れ」


 低く唸るような声で、団長が命令した。それだけで、皆は敬礼して足早に去ってしまう。


「カリナ嬢、ここでは話が進まない。場所を変えていいか?」

「………………べつに、よかよ」


 ドアのない部屋じゃ、全部だだ漏れになってしまうから、渋々了承した。




【ザックリ解説】


 そがんないけん ─→ そんなにないから

 ほっとってよ ──→ 放っておいてよ

 〇〇っち ────→ 〇〇と、〇〇って

 ことやろうもん ─→ ということでしょう?

 〇〇するからよか → しなくていい、いらないです

 べつに、よかよ ─→ ケースバイケース。このパターンは『いいですよ』(肯定)



 ※わからない言葉があれば…………ネットで調べてね☆

  (グー○ルさんに丸投げ)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど、なるほど。 作者さんなぁちっごの方の人たいなあ。 あっちは佐賀やら熊本やらの言葉も交じるけん、そやけん「博多弁」て書いとんしゃれんとやねえ。 ちなみに、「そがん」がまさに佐…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ