26:福岡県民、拝む。
過去の大人な事情がバレた。
団長は、私の首筋に顔を埋めて再起不能になっている。
「…………いやに、口づけが上手いと思った」
「そう?」
上手いか下手かはよくわからない。まぁ、するの好きだけども。
「てか、団長の年で未経験って多いと?」
「うぐぅ…………」
何かいけないボタンを強連打してしまったらしい。団長が息も絶え絶えになっている。
「話したくなかなら、無理に聞かんよ?」
「ん……いつか、勇気が出たら………………たぶん、話す」
なかなか勇気は出ないらしい。
「あー…………仕事に行きたくない。ずっとこのまま抱きしめていたい」
団長の本音ダダ漏れが面白くて、嬉しくて、クスクスと笑いながらも、早く着替えろと急かしておいた。
「何かの病気かと焦ったぞ」
「めんご」
団長が渋々と動き出し、着替えると言ったので、ベッドに座ってそれをボーッと眺めていた。
寝間着の上をバサリと脱いだ瞬間に首から胸元に現れた発赤。
鏡を見て慌てふためく団長。
勢い良く目を逸らす私。
身体はとても素晴らしかった。
ドンと張りのある雄っぱい、バキバキの腹筋と腹斜筋。
拝むほどに美しかった。ごちそうさまでした。
「何してるんだ?」
ベッドの上で正座していたら、団長に怪訝な顔をされた。
「いや、尊かなぁ、とね」
「皆こんなもんだぞ」
「えー? 副団長も⁉」
思ったよりもワクワクとした声が出てしまっていたらしい。
上半身裸のままの団長が、大きな歩幅で颯爽と近寄って来てた。
「俺の身体じゃ満足できないのか?」
「言い方っ!」
ドフリとベッドに押し倒された。
艶めかしく身体を触ってくる団長。
不埒な手を必死に止めていたら、ムッとされてしまった。
「何故止める?」
「いや、朝やん」
「だから?」
「朝ご飯の席につかんと」
「ならば、煽るな」
「へぇい――――いたぁぁ!」
首筋に顔を埋めてきたので、キスマークでも付けるんだろうと、そっと受け入れたのに。
ガジリと噛まれた。
絶対に歯型が付いたと思う。
団長は楽しそうにクスクスと笑い、私の頬を撫でると、軽くキスしてきた。
「すまん」
「笑いながらゆっても、説得力がなか!」
「ふはははは! ん」
何度も何度もバードキスをしては、微笑みながら「愛してる」と囁いてきた。
何だか可愛いから許してやろう。
「おはようございます」
予定よりかなり遅れて朝食の席に向かうと、既に義両親は食べ始めていた。
「おはよう。遅かったわねぇ、ローザリオ?」
そういえば、名前の問題が残っていたなぁ、ということと、同室にした犯人はお前かぁ! と考えていたら、団長の地を這うような低い声が隣から聞こえてきた。
「その名で呼ばないでください。ニヤニヤとしないでください。もうちょっと思慮のある行動を願います」
超絶不機嫌になってしまったようだ。
空は昨日の雨が未だ続いており、室内もなんとなく薄暗かった。
団長には、昨日の雷雨が戻って来てしまったらしい。
次話は、本日21時頃に投稿します。




