18:福岡県民、甘やかされる。
ロイ団長と正式にお付き合いすることになって一ヶ月。
デロデロに甘やかされています。
「カリナ、段差がある。気をつけて」
「カリナ、少し熱いぞ。気をつけて」
「カリナ、今日は日差しが強い。帽子を」
――――ん?
甘やかしというか、幼児か老人扱いな気がしてきたぞ。
しょっちゅう手も引かれてるし。
「いや、エスコートだからな?」
「いや、わかっちょるけどね。こう、なんとなくね」
夏の終わり、秋のちょっと手前。
カフェのテラスでのんびりティータイム。
甘い甘い紅茶を飲みながら、甘い甘いロイ団長の視線をビシバシ。
四角いテーブルなのになぜ隣に座るのかとか、何故手をつなぐのか飲みにくくね? とかとか、気になることはいっぱいあるけれど、お付き合いしたてのお花畑脳でスルー。
「このあとはどがんすると?」
「んー。母がそろそろ会わせろとは言っているから、本邸にでも行ってみるか?」
「……」
とりあえず、立ち上がってロイ団長の後頭部をスペーンと叩いた。
「いたいぞ?」
「団長のすかぽんたん! そがんとは一週間とか一ヶ月前にゆーとってばい!」
「そんなに気負わなくても大丈夫だがなぁ」
それは団長は実家だからだ。
私には嫁姑問題とか、嫁舅問題とか発生するんだぞと力説した。
団長は楽しそうにくすくすと笑いながら私の話を半分聞き流していた。ので、頬を抓ってみた。
「いひゃひゃひゃ。いじけるカリナも可愛いなぁ」
ちゅっちゅ、と頬にバードキス。
何を言ってもやっても、返ってくるのは甘々だった。
「団長、王族の一員っちゃろ?」
「随分と遠いがな」
「ちゃんとした格好で行かんと失礼やん」
団長とお付き合いするようになって、シンプルめのデイドレスなどを着るようにはなったけれど、爵位のある方々にお会いできるような服ではない気がする。
「そもそもな、俺は随分と行き遅れているから、どんな相手でも受け入れると言われてるんだよ。だから大丈夫だ」
それのどこが大丈夫なんだろうか。
団長に軽やかにディスられた気分である。
「こんな可愛い子と付き合っているんだ、と見せびらかしたいんだよ」
またもや、ちゅっちゅちゅっちゅ、ここが外だと忘れているのだろうか?
「もぉー、しからしかって!」
団長のこめかみにアイアンクローしたかったけど、手が小さかったため、顔をベチンと叩いただけになってしまった。
「な? 会ってみてくれないか? なっ?」
「んー、まぁよかよ」
避けられないイベントだし、団長が乗り気だし頑張ってみようかな? と思いそう返事すると、破顔してありがとうと言われた。
――――団長、可愛かなぁ。
次話は本日21時頃に投稿します。




