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福岡県民、方言丸出しで異世界に行ったら、言葉が通じらんかった件。 〜騎士団長に溺愛されとるのはよかけど、なんでか方言で話すごつゆわれます〜  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中
第一章:福岡県民、異世界へ行く。

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13:福岡県民、怒らせてしまう。




「んー!」


 ゲシゲシとハンス副団長の脛を蹴った。


「そんな可愛らしい蹴りでは、なんの抑止にもなりませんよ?」

「っ、なんで?」

「なんで? 簡単なことでしょう?」


 またキスされた。

 今度は首筋に、吸い付くように。

 

「好きだからですよ。ロイより私を見て下さい」

「っ――――」


 泣きそうな声でそう囁かれた。

 心臓が締め付けられる。

 でもこれは、副団長が好きだからではない。

 全身で『愛して』『好きだ』と言ってくれている副団長に、応えることが出来なくて申し訳ないから。


「ごめんね?」

「……やっぱりロイですか?」


 ――――やっぱり?


「…………誰も、好きじゃない」

「は? なぜ、そのように分かりやすい嘘を吐くんですか? 年齢もでしたが。貴女は嘘ばかりだ」

「っ、煩――――」

「何を、しているんだ……?」


 地を這うような、怒りを含んだ低い声。

 聞き慣れた、さっきまで側にいてくれた人の、声。


「だんちょ……」

「何をしているんだ? ハンス」


 副団長の体で全然見えていなかった。

 足音も聞こえなかった。

 ちらりと見上げた副団長の顔は、少しホッとしたような、悲しそうな、微妙な表情だった。


「彼女を離せ」

「ロイ、女性はきちんと玄関まで送らないと。お前がそう教えたのに、なにをやってるんだ?」

「……」


 ギリリと歯を食いしばる団長が、副団長越しに見えた。

 あんなに怒っている顔は見たことない。

 団長の見た目は割りと厳しい系だけど、基本は真面目で優しいし、部下の失敗にも寛容な人だ。

 

「離れろと言っている」

「…………ハァ。はいはい」


 副団長が私から離れると、両手を頭の横に上げた。


「カリナ、何をされた?」


 団長が私と副団長の間に割り込んで、恐ろしいほどに怒りを含ませた声で聞いてくる。

 副団長の顔は、団長の背中で見えなくなってしまったけど、きっと泣きそうな顔をしているはずだ。


「なんもされとらんよ」

「……本当にか?」

「うん。壁に押し付けられとっただけ」

「…………ハンス、消えろ」


 ザリッと砂を踏む音が聞こえた。このまま、立ち去ったら…………駄目だ。本能的にそう思った。


「副団長っ! 明日、仕事場でね?」

「っ…………貴女はどこまでも残酷ですね」

「うん。ごめんね」




 気まずい。

 とてつもなく、気まずい。

 部屋のベッドに座らされて、団長は私の正面で仁王立ち。


「何もされていないと言ったよな?」

「……」

「首筋のこれは、何だ?」


 つ、と指先で首筋をなぞられた。腰から背中に続々とした震えが這い上がってくる。


「っ!」

「『誰も好きじゃない』そう、聞こえた。それなら何故、私にキスをした? 何故、私からのキスに応えた? 何故、期待させる」

「っぁ……」

「カリナ、君は…………確かに残酷だ」

「ごめんなさい」


 下を向いて、謝るしか出来なかった。

 団長は大きな溜め息を残して去っていった。




次話は、明日の朝7時頃に投稿します。

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