捜索
「任務はわかった。だけどさぁ! なっんで夜に任務開始なわけ!?」
情けない声を出す志修那に対し、操姫刃が冷静に告げる。
「妖魔憑きが夜しか活動しないのだから、仕方がないだろう? 諦めろ」
「うわぁぁ! なんって無慈悲な!! 何度も言うけど僕は!」
「前線向きじゃないんだよねー! わかってるよーしずなん! だからそんな大声出さんといてね?」
楓加が優しい声色で言うと、そのまま辰真の方へ視線をやる。
「それで、ライライが感じる妖魔の気配はどうなってるん? たっくん!」
楓加に訊かれ、困惑した顔をする辰真のかわりにライが答えた。
【今のところ、妖魔の気配はなさそうだ】
「そっかー。じゃあどうしよっかなー? みんな、なにか意見とかないかな?」
楓加の言葉に反応したのは操姫刃だった。
「おれが思うに、妖魔憑きは今のところ人気のないところでしかやらかしていない。つまり……探すならば路地裏とかではないか?」
彼女の言葉を受けて、辰真がぎこちなく口を開いた。
「あの……。じゃあ、二手に分かれて路地裏を探す、とか……?」
「なぁんだって!? 二手!? 僕がいるのは足手まといにしかならないと思うんだけど!?」
志修那が大声でネガティブな発言をするので、辰真は困惑してしまう。
(この人……なんでこんなに卑屈なんだろう……?)
そんなことを辰真が思っていると、楓加が右手を上げて進言した。
「じゃあ頼りになるライライ含めた、たっくんとしずなん、ウチとトッキーでわかれるでいいかな?」
「ま、まぁそれならいいかな……! 辰真、ライ! 頼んだからね!?」
「あ……はい」
話がまとまった四人は、妖魔憑きを探して二手に分かれることとなった。
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「な、なぁ……辰真?」
「……はい」
街灯だけを頼りに夜の市内を歩く中で、突然志修那が口にしたのはいがいな言葉だった。
「僕は本当に前線向きじゃないんだけどさぁ……。その、君らってどうなのさ?」
「どうって……」
一端言葉を切り、しばらくの沈黙の後辰真は静かに答えた。
「……戦う必要があるなら戦うだけです」
「うっ……マジかぁ……。そっかぁー」
何故か額に手を当てる志修那の反応を不思議に思いながらも、辰真は前を進んで行く。元々人避けの札を使っているとはいえ、どんどん薄暗くなっていく道に志修那の表情が歪む。
「……ほんっとうに、嫌なんだけど……」
一人呟く彼に声をかけようか迷って……辰真はやめた。元々そんなに人が得意ではないし、下手に触れて痛い目をみたくなかったからだ。
だから、気付くのに遅れてしまった。紅蓮の炎の弾丸が迫っているのを――。