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不思議な気分

 今日から自室となる部屋にて整理をしていた辰真(たつま)は、一息()いた。


「……そんなに荷物、多い方じゃないと思うんだけどな……」


 ボソリと呟けば、魔本から出て辰真(たつま)を手伝っていたライが口を開く。


【荷物が多いというより、タツマは昔から片付けが苦手だからな。まぁ適当にワタシがやっておくから、少し庭にでも出ていたらどうだ?】


「……いや、それはさすがに……。俺もやるよ」


 ライに任せると、自分が後でどこに何があるのかわからなくなることを経験で思い知っている辰真(たつま)は、再び手を動かし始めた。その様子にライは優しく微笑むのだった。


 ****


 全員の荷物整理が終わる頃には、昼時を過ぎていた。

 辰真(たつま)がリビングに降りると、キッチンからいい匂いが漂ってきた。


(……カレーか?)


 匂いに釣られてキッチンに顔を出せば、そこには操姫刃(ときは)がいた。手際よく、効率的に調理をしている彼女の邪魔をしてはいけないと、そっと離れて、リビングを通り抜けて庭に出ようとした時だった。


「あっ、たっくんじゃーん! 荷物整理終わったん?」


 朗らかに楓加(ふうか)が声をかけてきた。辰真(たつま)は少し困惑気味に返事を返す。


「あ、はい……。終わりました」


「そかそかー! じゃあ休憩って感じ? ていうか、お昼もう食べた? 良かったらトッキーが作ってるカレー食べない? 美味しいんだよ~!」


 彼女の誘いを断る理由が見つからなかった辰真(たつま)は、戸惑いつつつも彼女の誘いを受けることにした。


(まぁ……腹減ってたのも、事実だしな……)


 四人掛けのテーブルに腰掛けると、志修那(しずな)がちょうど降りて来たらしく足音がした。


「ふあ……。お腹空いたな~ってこの匂いはカレーか!? 僕、大好物なんだけど!?」


「じゃあラッキーだね、しずなん! みんなの分あるから食べよ食べよ~」


 しばらくして操姫刃(ときは)が鍋ごとカレーを持ってきた。その量の多さに思わず辰真(たつま)志修那(しずな)が驚く。


「……え?」


「おいおい! いくらなんでも多くないか!?」


 二人の言葉にも、操姫刃(ときは)は顔色一つ変えずに答える。


「おれがよく食べるんだ、文句があるのか? それに、カレーは日持ちもするんだ。多くて困ることはないだろう?」


 作り手にそう言われてしまえば、何も言い返せなくなる。操姫刃(ときは)は四人分のカレーを手際よく用意し始めた。


「あ! そういえばたっくん、ライライの分はいらないの?」


「あ……はい。ライはその、俺達人間の食事はいらないタイプの妖魔(ようま)なので……。その、ありがとう、ございます」


 辰真(たつま)がそう言えば、楓加(ふうか)は穏やかな笑みを浮かべ、操姫刃(ときは)からカレーを受け取った。どうやらシーフードカレーのようで、エビなどがふんだんに盛られていた。


(……なんだろう。不思議な気分だ……)


 まだ出会って間もない、そんな間柄の四人が揃って食事を摂ることに困惑しつつも辰真(たつま)もカレーを受け取り、全員に行き渡ったことを確認した楓加(ふうか)の合図で、遅めの昼食を食べ始めるのだった。

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