はぐれ者達
九十六期、Eチーム教官室にて。
モニターに表示されているデータを見ながら、和沙が静かに声を発した。
「伊鈴ノ宮志修那……人造式神製造の第一人者の孫にして後継者でありながら、退魔師としての才覚ありとみなされトクタイ入隊試験を受けなんなく突破。浮風楓加と初架操姫刃……藤波家所有の被検体だったのを保護した際に、退魔師としての才覚を見出され修行と入隊試験を受け突破。そして、八月一日辰真……かつて退魔師であった神蔵の血を引き、妖魔と対等な契約を交わしたことで保護かつ監視対象となり、トクタイ入隊へ誘導し結果試験を突破」
各データと今日の様子を照らし合わせ、報告書を作成していく。
「……これでは、はぐれ者達の巣窟……。どうしてくれるの? 蒼主院輝理?」
睨みつけるように、さきほどから近くにあるソファーで優雅にお茶をしている男に声をかければ、彼はいつも通りの穏やかな微笑みを浮かべながら返す。
「ルッツと呼んでほしいところなんだけどなぁ……。まぁそれはさておいて。僕としては、なかなか興味深いカードが揃ったと思うのだけれど?」
「……面白がっている? 彼らを預かる身にもなって?」
不満げな和沙に対し、ルッツが苦笑しながら答える。
「まぁ……君としても久しぶりのEチーム担当教官なんだ、肩の力を抜きつつ上手くやっておくれよ?」
「丸投げということ? ……この借りは返してもらうから」
低い声色で威圧する和沙に対し「ごちそうさま」と返すと、ルッツはカップを置いてゆっくりと立ち上がり部屋を出て行った。その後ろ姿を見送ると、和沙は静かに息を吐いた。
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翌朝。用意された三階建ての一軒家の前に集合した辰真、志修那、操姫刃、楓加の四人は早速部屋割りを決める事にした。
「別にフェミニストとかってわけじゃあないけどさぁ、僕的には肩身を狭くするようなことはしたくないんだ! というわけだから……女子二人! 先を譲るから好きな部屋を決めるといい! ほ……辰真もそれでいいよな!?」
「……あ、はい。それでいいです。初架さんと浮風さんどうぞ」
二人に譲られた操姫刃と楓加は迷わず三階を選び、辰真と志修那が二階になった。
「家具は確か、二年前のEチームの人達のがあるんだよね~。それ使っちゃおうか!」
「その方が予算もカットできるしな。それに何より、リーダーが言うなら従うまでだ」
楓加の言葉に操姫刃が返すと、彼女は朗らかに微笑んだ。そんな二人のやりとりを横目で見ながら、志修那がボソリと呟いた。
「……仲の良い女子二人の間に挟まる男になんて待っているのは死だよ、死。くわばらくわばら……」