把握テスト①
訓練場に到着した一行は、和沙の指示で戦闘能力把握テストの順番を決めることにした。
「よし、そこの……なんだったか? お前の弱さを見せてみろ」
そう言って操姫刃が志修那を指さした。
「なぁ!? ちょっと失礼な文言じゃあないかなぁ君ぃ! まぁ……最後にされるよりマシだけどさぁ!」
愚痴りながらも志修那は前に出て、戦闘体勢に入ったようだった。呪文だろう模様が描かれた、手に収まる程度の長さの鉄の棒を取り出すと、構えた。
「では、伊鈴ノ宮志修那君。準備はいい? ……いいみたい? では、模擬戦闘……開始」
和沙の合図で土偶型の人造妖魔が射出された。それを確認した志修那が手にしていた棒を宙に投げる。
「……来い! 武律!」
彼が呼び出したのは、二メートルくらいの大きさの、メカメカしいトリコロールカラーの式神だった。
「武律! とにかく敵を倒しまくってくれよ!!」
武律はサムズアップすると、飛来してくる人造妖魔達を手当たり次第に破壊して行く。あっという間に倒し終えると、和沙が止めた。
「そこまで。……皆、どうだった?」
「しずなん、弱くなんかないじゃない! ぶーちゃんめっちゃつよつよだったよ~!」
楓加の言葉に志修那が大声で反論する。
「よく見てたのか!? 僕自身は一度も攻撃してないだろう!? そういうことだよ!!」
あだ名の部分はスルーして、自身の弱さをアピールする彼に操姫刃が口を開いた。
「お前、なんでそんなに自分を卑下するんだ? 非合理的で生産性がないが?」
「ごめんなさいね! でもなでもな!? 僕自身の戦闘力を考えると、どうあがいても前線向きじゃないんだよ!」
情けない声を上げると志修那が顔を覆いながら次の人を指名した。
「次はそういう君でどうだ! めちゃくちゃ強そうだけども!」
指名された操姫刃は答えるかわりに前へ出た。それを受けて、和沙が右腕を上げる。
「では、次は初架操姫刃君。準備はいい?」
和沙に訊かれた操姫刃は無言でうなずき、腰に下げていた伍佳剣を抜刀した。その刃は不思議な形状をしていた。
(なんというか、メカメカしい……? いや、近未来的な造形? とにかく独特だ)
辰真がそう思っている間にも、操姫刃のテストが始まった。彼女は剣を構え、飛来してくる人造妖魔達を斬って行く。
「金の術式、壱銘、斬葬」
遠距離にいた人造妖魔へ向かって操姫刃が退魔術式を発動させた。回転しながら、舞うように。操姫刃の動きは美しく、そしてしなやかだった。
「……やめ」
再び和沙の合図が飛ぶ。人造妖魔の射出が止まったのを確認すると、操姫刃は剣を鞘に納めた。
「じゃあ~どうしよっか、たっくん? ウチが先かそっちが先か! じゃんけんする?」
辰真の方を見ながら尋ねる楓加に、困惑しながら返す。
「……えっと……じゃあ、それで……」
曖昧な辰真の態度を気にすることなく、楓加は朗らかな笑みを浮かべてピースサインをする。
「オッケー! じゃあウチね!」
その明るさが、辰真には眩しかった。