決着
【オレォ、カァ? アハハハハハ!!】
不敵な笑い声を上げる『爆炎の妖魔』の思念に向かって、辰真が接近し刀を振り下ろす。その刃をかわすことなく、片手で受け止めると、思念は炎の威力を増幅させた。
「っつ……熱い……!」
辰真が持つ黒い刀身の刀は、特殊な素材で出来ており炎程度で溶けることはない。だが、その熱波はダイレクトに辰真へと届く。
(くっ……射離凪様の加護は武器強化のみ……。俺自身に加護は……ない……だから!)
「封呪文、改変解放! 火の術式、参銘、爆炎列弾!」
『爆炎の妖魔』の思念の炎と相打ちさせる形で、火の術式を放つ。紅蓮の炎と淡い赤の炎がぶつかり合う。
【マダマダマダマダ! オレハァ!」
炎の勢いを増し、辰真を焼き殺そうとする思念に対し、火の術式の威力を上げる。
「……来い! ライ!!」
珍しく声を張りあげる辰真に答えるように、ライが辰真の背後から飛び出した。そして……。
【お前を、喰らわせてもらおう!】
ライが大口を開け、思念を炎ごと飲み込んだ。声にならない思念の断末魔が周囲に響くとともに、周囲を包み込んでいた炎も消えて行く。その光景を見つめながら、辰真が静かに息を吐く。
「……終わった……か」
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「いやぁー二人とも大丈夫だった? ごめんね? ウチとしずなん、炎の威力が凄すぎて上まで登れなかったの! 本当に、ごめんなさい!」
炎が鎮火してすぐに駆けつけて来た楓加に対し、操姫刃が治療を受けながら答える。
「気にするな。おれを屋上にお前はあげた。それだけで大助かりだし、今の治療も助かっている。問題はない」
彼女の言葉を聞いて、困惑した声を上げたのは志修那だった。
「……は? 初架を浮風が……あげた? ってどうやって……まさか……え?」
「ん? ウチが思い切りぶん投げて、トッキーを屋上まであげたよ~? それがどうかしたの?」
まさかすぎる答えに、志修那は黙って同じく横で治療を受けながら固まっていた辰真の肩を叩く。
「……伊鈴ノ宮先輩? あの、地味に……痛いです……」
「ごめんなさいね!? でもさでもさ! わかっておくれよ! なぁ辰真! なぁ!?」
そんな二人のやり取りを不思議そうな顔をして見合わせる操姫刃と楓加。彼らのやり取りを横目で見つつ、目を覚ました榛登がぼやく。
「……とんでもないことになったな……オレ」
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同時刻。某所にて。
月明りだけを頼りに逃げる妖魔を彼らは追い詰める。
「はぁはぁ! わ、わしが何をしたというんじゃ! 下界でなにもしとらんぞ!?」
涙を浮かべて叫ぶ壮年の人型の妖魔に対し、彼女は容赦ない言葉を叩きつける。
「うるっさいわね。アンタ達が……妖魔が生きていること自体が罪なのよ? そんなこともわからないわけ? あぁ! うっかり答えちゃったじゃない! うっざ、気持ち悪っ! だから、死ね」
全く会話になっていないが、そんなことなど気にもせず彼女は怯える妖魔に容赦のない斬撃を喰らわせ、その命を奪った。
「……妖魔は殲滅させる。トクタイのやり方なんて……生ぬるいのよ……」
憎悪に満ちた声が夜の闇の中、響くのだった。




