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【オレォ、カァ? アハハハハハ!!】


 不敵な笑い声を上げる『爆炎の妖魔』の思念に向かって、辰真(たつま)が接近し刀を振り下ろす。その(やいば)をかわすことなく、片手で受け止めると、思念は炎の威力を増幅させた。


「っつ……熱い……!」


 辰真(たつま)が持つ黒い刀身の刀は、特殊な素材で出来ており炎程度で溶けることはない。だが、その熱波はダイレクトに辰真(たつま)へと届く。


(くっ……射離凪(いりなぎ)様の()()()()()()()()()……。俺自身に加護は……ない……だから!)


封呪文(ふうじゅもん)、改変解放! ()術式(じゅつしき)参銘(さんめい)爆炎列弾(ばくえんれつだん)!」


『爆炎の妖魔』の思念の炎と相打ちさせる形で、()術式(じゅつしき)を放つ。紅蓮の炎と淡い赤の炎がぶつかり合う。


【マダマダマダマダ! オレハァ!」


 炎の勢いを増し、辰真(たつま)を焼き殺そうとする思念に対し、()術式(じゅつしき)の威力を上げる。


「……来い! ライ!!」


 珍しく声を張りあげる辰真(たつま)に答えるように、ライが辰真(たつま)の背後から飛び出した。そして……。


【お前を、()()()()()()()()()!】


 ライが大口を開け、思念を炎ごと飲み込んだ。声にならない思念の断末魔が周囲に響くとともに、周囲を包み込んでいた炎も消えて行く。その光景を見つめながら、辰真(たつま)が静かに息を()く。


「……終わった……か」


 ****


「いやぁー二人とも大丈夫だった? ごめんね? ウチとしずなん、炎の威力が凄すぎて上まで登れなかったの! 本当に、ごめんなさい!」


 炎が鎮火してすぐに駆けつけて来た楓加(ふうか)に対し、操姫刃(ときは)が治療を受けながら答える。


「気にするな。おれを屋上にお前はあげた。それだけで大助かりだし、今の治療も助かっている。問題はない」


 彼女の言葉を聞いて、困惑した声を上げたのは志修那(しずな)だった。


「……は? 初架(はつか)浮風(うかせ)が……あげた? ってどうやって……まさか……え?」


「ん? ウチが思い切りぶん投げて、トッキーを屋上まであげたよ~? それがどうかしたの?」


 まさかすぎる答えに、志修那(しずな)は黙って同じく横で治療を受けながら固まっていた辰真(たつま)の肩を叩く。


「……伊鈴ノ宮(いすずのみや)先輩? あの、地味に……痛いです……」


「ごめんなさいね!? でもさでもさ! わかっておくれよ! なぁ辰真(たつま)! なぁ!?」


 そんな二人のやり取りを不思議そうな顔をして見合わせる操姫刃(ときは)楓加(ふうか)。彼らのやり取りを横目で見つつ、目を覚ました榛登(はると)がぼやく。


「……とんでもないことになったな……オレ」


 ****


 同時刻。某所にて。

 月明りだけを頼りに逃げる妖魔を()()は追い詰める。


「はぁはぁ! わ、わしが何をしたというんじゃ! 下界でなにもしとらんぞ!?」


 涙を浮かべて叫ぶ壮年の人型の妖魔に対し、彼女は容赦ない言葉を叩きつける。


「うるっさいわね。アンタ達が……妖魔が生きていること自体が罪なのよ? そんなこともわからないわけ? あぁ! うっかり答えちゃったじゃない! うっざ、気持ち悪っ! だから、死ね」


 全く会話になっていないが、そんなことなど気にもせず彼女は怯える妖魔に容赦のない斬撃を喰らわせ、その命を奪った。


「……妖魔は殲滅(せんめつ)させる。トクタイのやり方なんて……生ぬるいのよ……」


 憎悪に満ちた声が夜の闇の中、響くのだった。

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