表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/52

まみえるは

「はぁはぁ! クッソぉ! 来るなぁぁぁ!!」


 青年は大声を上げながら、炎を全身に(まと)い始める。禍々(まがまが)しい(あか)が夜を染め、熱が辺りに伝播(でんぱん)していく。


「ちっ、熱いな。差し詰め、憑りついてる妖魔は火属性といったところか?」


 操姫刃(ときは)の言葉に(うなず)辰真(たつま)。そんな二人の先を行くライは、あっという間に青年に追い付いた。


【案ずるな。今、解放してくれる! 爆葬爪(ばくそうそう)!】


 前足を交互に動かしながら、ライが飛ぶ衝撃波の爪を飛ばす。それを青年は炎の壁を出して防ぐ。だが……。


「……背後はもらいました……!」


 ライに気を取られていた青年の背後に、いつの間に回り込んだのか辰真(たつま)がいた。そこへたたみかけるように、操姫刃(ときは)も合流し、青年に(やいば)を向ける。


「チェックメイト、だな? 妖魔憑き、大人しくおれ達に降伏しろ。……お互い、合理的に行くとしよう?」


 半分脅しのような口調の彼女に答えたのは、どこからともなく響く"声"だった。

 

【はっ! たまんねェなァ! オレもォ乗ってきたぜェ!? なァ、榛登(はると)ォ?】


「う、うるさい! 悪魔が! ()()()()()()でなんで! なんでこんなことになっているんだ!?」


 青年――榛登(はると)の言葉に、辰真(たつま)が困惑した声を発する。


「……貴方……死にたいんですか……? なのに……妖魔憑きに?」


「ああそうだよ!! 悪いか!?」


 怒気を含んだ榛登(はると)の声に呼応(こおう)するように、さきほどの声が(かぶ)さった。


【いい感じの絶望具合だろう、()()()()さんよォ? だァから気に入ったんだァ! オレの(うつわ)にふさわしいってなァ!!】


 その言葉を最後にその声は聞こえなくなった。だが、それと同時に榛登(はると)の様子が変わる。


「あはははは! いいねェ! 来たぜ来たぜェ!」


 先程までとは違う口調、声色、そして気配。降ろしていた茶髪を上に掻き上げると、しばらくして落ち着いた動作で辰真(たつま)操姫刃(ときは)に向かって炎の弾丸を放つ。

 それを防ぐ二人に向かって、()は声を上げる。


「やっとォ! 馴染んだなァ!!」


 その言動と行動は明らかに、先程までの榛登(はると)とは別人である。その姿をみた操姫刃(ときは)が声を荒げる。


辰真(たつま)! ()()()()()!!」


「っ! はい!」


 そう辰真(たつま)が返答した瞬間には、()()が昇り、炎が屋上全体を包み込んでいた。かろうじて防御の術式(じゅつしき)を展開した辰真(たつま)と護符で防いだ操姫刃(ときは)だが、炎の勢いは止む気配がない。


「お前らはァ、強いのかァ? それとも雑魚かァ?」


 (たの)しげな妖魔の問いかけに答えたのは操姫刃(ときは)だった。


「強いかどうかは、戦えばわかることだろう? なぁ……『()()()()()』!」


 彼女にそう呼ばれた彼は高らかに笑う。


「正解だァ、トクタイさんよォ! 褒美の炎だァ!!」


 防御技を展開したままの二人に向かい、炎の弾丸を二発放つと、『爆炎の妖魔』は狭い屋上から――勢いよく飛び降りた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ