顔合わせ【表紙あり】
新連載かつ、「落零<rakurei>~おちこぼれ達の退魔伝~」の続編になります。
そのことを踏まえた上で、お読みいただけると幸いです。
表紙:梅咲しゃきこ様(https://twitter.com/Ume_syaki)
日差し照りつける炎天下の中、八月一日辰真は地図を片手に目的地まで歩いていた。
(特殊対妖魔殲滅部隊……か。ここから……始まるんだな、俺達は)
そんな彼の考えを見抜いたかのように、腰に下げた銀色の本の中から声が聴こえてくる。
【タツマ、緊張しているな? お前は人見知りだからな】
「……人見知りなのは、仕方ないだろ……ライ」
ライと呼ばれたその声の主は、辰真の反論を気にすることなく話を続ける。
【どんな者達なのか、少しは気になるだろう? ワタシの事も含めて……受け入れられるかどうかがな……】
どこか不安げな声色のライに、辰真が静かに答える。
「……大丈夫だろ。式神使いやら鬼憑きやら、妖魔と関連した力を持つ人達もいるって聞いたしな……」
そんな会話をしているうちにあっという間に目的地、特殊対妖魔殲滅部隊、通称トクタイの本部に辿り着いた。認証カードを見せて敷地内に入り、自分のチーム……Eチーム専用ルームまでひたすら歩く。その胸に期待はなかった。
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「時間通り。自分があなた達の九十六期Eチームの担当教官、流名和沙。そして、こちらが祓神様の射離薙様……よろしく。じゃあ各自、自己紹介を」
集合してすぐ黒髪ポニーテールの女性に、右側が黒髪で左側が白髪の和服姿の少女を紹介され、辰真は困惑しつつもチームメイトである他の三人に視線をやった。
一人は赤髪をハーフアップにした鋭い目つきの少女、一人はゆるふわな薄緑色の髪をなびかせた可愛らしい少女、最後の一人が長い紫色の髪を一つ結びにし不貞腐れた顔をした青年だった。
観察していると、ゆるふわな髪の少女が口を開いた。
「じゃあ、ウチから行こうかな! 名前は浮風楓加。年齢は十八歳で、能力は祓力! メインで使う術式は木の術式~! だから回復が得意かな? あと、ウチよく距離感わかってない言われるから、そこは堪忍ね? よろしく~! 次はトッキーお願い!」
楓加は明るく赤髪をハーフアップにした少女の方を向いて話を振った。彼女はそれに対して気を悪くするでもなく、淡々と自己紹介を始めた。
「おれか? おれは初架操姫刃。年齢は楓加と同じ十八だ。能力は祓力と……特異能力があるが説明が難しいからな、使用する時が来たら見せる。武器は伍佳剣だ。これからよろしく頼む」
男勝りな口調であっさりと説明する彼女に、辰真が妙な感心をしていると青年が声を上げた。
「な、なんだよぉ~! 君達揃いも揃って早々と自己紹介しちゃってさ……。最後が嫌だから言うけど! まず! 僕は前線向きじゃないから! 前に出るとかマジで無理だから! そこ、頭に入れておいてよ!!」
どんどん声が大きくなっていく青年に対し、操姫刃が冷静に声をかけた。
「で? お前は誰だ?」
「脱線してごめんなさいね! 伊鈴ノ宮志修那だよ! 武器は人造式神の三体だけど……ほんっとうに前線向いてないから! 一応、水の退魔術式とか使えるけど! 僕を頼るなよ! 年齢も言うと十九だけども! 頼るなよ!」
どこまでも声高にネガティブな言葉を吐く志修那に対し、皆がなにも言えずにいると和沙が静かに辰真の方に視線をやった。
「次は貴殿だ。自己紹介を」
「……はい。俺は……八月一日辰真……です。けど、苗字で呼ばれるのは好きじゃないので、名前で呼んでください。年齢は十七歳でこの中だと一番下になります。えっと……後は、武器は銀色の魔本である刹歌と能力は祓力。……で……」
そこで一端言葉を区切ると、静かに三人に向かって告げた。
「妖魔と契約しています。よろしくお願いします」