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12:大金渡されました


聖女召喚の儀から早一週間……ほんとに一瞬で過ぎていった一週間だった。でも、手に職(?)も付けたし出だしは順調なんじゃないかな。

そんな折、緊急生活支給金なるものを貰った。のは、いいんだけど。


「あの、この国の貨幣価値とか市場価格とか私は知らないんですけど、これは多くないですか…?」


麻袋一杯に入った金銀銅の硬貨は、両手で持ってもずっしりとした重さがあった。袋自体がそれなりの大きさなので、中に入っている硬貨もそれなりの量のはずだ。

ご丁寧に宰相からの直筆メッセージで『異世界にお呼びした詫びも含めてある。()()()()()()がひとまずこれで身の回りのものを用意しなさい』という旨のカードがついていた。

……これは、少ない金額なのだろうか。そうは見えないんだけれども。

しかもひとまずってなんだ。これ以外にもお金を頂けちゃうのか。やば。


「この国はものすごく物価が高いとか税金がものすごく高いとか硬貨の価値が低いとかそういう…?」

「仮にそうだとしてもこの金額は過剰だがな」


そしてこの国の税率はそこまで高くないし硬貨の価値も適正だ。そう結んでギルバート様たちは麻袋の中身を眺めている。

魔法騎士団の団長と副団長が、これは中堅騎士の月収分くらいありそうだな、とか呑気に話しているが、騎士の月収ってどういうことだ。多いんじゃないのか。数多のファンタジー小説では騎士はそれなりのお給金を貰っていたはずだぞ。


「まぁ、なんだ。宰相殿からのお心遣いだと思って受け取っとけばいいんじゃないか?」

「……せめて半分くらいお返しするのは」

「むしろ不敬だぞ」

「ですよね……」


一度贈ったものを送り返されるのは、やはり快く思われないらしい。

アレックス団長の言う通り、ここは大人しく有難~く貰っておこう。無一文だったしお金大事だし。勝手に連れてこられた慰謝料だと思って。……むしろ慰謝料ではなく口止め料なんじゃ…?

いや、怖いからそういうの考えないでおこう。うん、ありがたやありがたや~~。


何はともあれ、一瞬にして無一文の清掃員から小金持ちの清掃員になりました。

緊急、ってわざわざ言うのだから、たぶんこれはもともと私に使われるようなお金ではないだろう。アレックス団長に確認してみても、どうやら聖女(=絵里奈)に使われるお金とは別の所から出されているみたいだ。

ならばどこから出てきたのだろうか。

もう一度、宰相からの直筆メッセージを読む。宰相様はテオドール様という方らしい。几帳面な字体で書かれたメッセージカードはほのかにお花の良い香りがする。

そして先程アレックス団長が言っていた”宰相殿からのお心遣い”……いや、まさかとは思うが、


「このお金、もしかして宰相様が……?」


2人同時に目を逸らされた。図星か。

もう一度麻袋の中を覗いてみる。きらきら輝く金銀銅の塊は、それに相応しい価値が付いているという。それが袋いっぱいに。

……すごくお金持ってるんだね、宰相様。見知らぬ異世界人にポンっと騎士の月収位渡せる程度には。

いやでもまぁ、そりゃそうか。宰相って日本でいうところの内閣総理大臣だっけ?政治を行う最高の行政首長だもんな。偏見かもしれないけどお金持ってそうだもん。

直接言えるか分からないけど、もし会えた時はちゃんとお礼言っておこう。ありがたや~~。


しみじみとした気持ちでもう一度メッセージカードを読む。う~ん…、身の回りの物か………。


「身の回りの物っていっても、服は支給してもらったのがありますし。ご飯は毎日食べれる、住む場所もある。他に何に使えばいいんでしょうか……」


来て早々に衣食住が整った感はある。

しかも今は(一応)清掃員として働いているので、その分のお給料も貰えるらしい。あ、ちなみに食堂の利用代と家賃は給料から天引きされるシステムみたいです。一日数時間ほどしか働いていないんだけど、これまで清掃員がいなかったからそれなりに高めの時給に設定してくれたらしい。

もし私が何も仕事をしないでぐーたらしてたらどうしてたんだ…と思ったら、「そもそもこっちに強制召喚したのはこちら側だから、別に働かなくてもいいんだぜ?(意訳)」と返されてしまった。も、申し訳ない…勝手に巻き込まれておいてタダ飯食らいは良くないと思います…。うん、働かざる者食うべからず。ただより高い物はないってね。


「支給した服っつっても男物しかねぇだろ?女物の服何着か持ってた方がいいんじゃねぇか?」

「あー……、確かに、そうですね…」


ちょっと頭から抜けていたが、そう言われれば確かにそうである。

パジャマが欲しいし何着か肌着も欲しい。私は寝る時はパジャマ派だし、ずっとさらし巻いてるのもちょっと窮屈だし苦しいんだよね……。かと言って何も着けないという選択肢はない。知ってるか?クーパー靭帯は一度伸びたら元に戻すことは出来ないんだ。


「あとはほら……ドレスとか?」

「…必要なんですか、ドレス」


この世界は日常的にドレスを着るような文化圏だったのか?初耳だ。

魔法騎士団に女性騎士とかはいないし、宿舎と演習場とギルバート様の執務室くらいしか行き来していないから、そもそも女性に合う機会が少ないし、会ったとしても王城のお仕着せを着ているので私服について知る機会がなかったのだ。

けどなぁ、ドレスか……。ああいうのって基本一人で着るように作られてないんじゃなかったっけ?ドレス買うくらいなら普段使いできそうなワンピースとかのほうが欲しいんだけど。


「…ドレスは、追々考えましょう」


今はとりあえず生活必需品を揃えるのが先だ。ドレスは必要になりそうになった時にまた考えよう。

色々考えたら結構必要なものとか欲しいものが出てきたな……これお金足りるかな?

うん、まぁ、足りるように考えれば良い話か。明日すぐに買い物に行くわけでもないし、日程は初めてのお給料をもらった後にしてもらおう。




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