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風の薬師  作者: ダイフク
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第27話 火の館


今、火の四聖マリオンは、目の前の男にどんな対応をしようか悩んでいた。


自分が妹のように可愛がっていた先代の四聖であるアマーリエを一目で虜にしたこの男。

正直、マリオンは筋肉ダルマが嫌いだった。アマーリエが筋肉を愛するので、自分も体を鍛え、そこそこ筋肉もついていると思う。


確かに、目の前にいる三人の男の中では一番筋肉質だろう。ダルマなんだから。

暑苦しい。それがマリオンの感想だった。


デカくてゴツイこの男が蕩けるような顔で彼の大切なアマーリエに擦り寄っている。


マリオンはアマーリエが可愛いので、彼女が産まれて初めての恋をしたと言うので、四聖の役目も引き継ぎ、彼女を恋人のもとにも送った。


しかし、こんな筋肉ダルマだったとは!

どうして、もう一人の男じゃないんだ!話に聞く限りではもう一人の男の方が強いそうじゃないか!

考え直せ、アマーリエ!!!


おめでとうとは言いたくない。

でも自分が逡巡している事に気づいているトイスからはからかうような目を向けられ、イライラする。ムカつく。あぁ、このダルマとトイスを殴り飛ばしたい!


でもアマーリエには優しくて兄のようだと思われたままにしたい。


マリオンが優しくするのはアマーリエだけなので、他の人には優しい人だとは、思われていない。少しつり目の目もキツく見える事を理解している。


「アマーリエ、彼が君の恋人なのか?」

「そう。マリオン、私達、イヴァンが薬師になったら結婚するの。イヴァンにはプロポーズされているのよ。」


結婚?プロポーズ?ダルマが生意気な!


「おや、まだ薬師になっていなかったのか?」

アマーリエに不釣り合いだろうと言うセリフを無理やり飲み込んだ。


「あ、でも、今から調べて貰ったら、俺、薬師になっているかもしれません。」


満面の笑顔は辞めてくれ。俺は見たくないと、マリオンは思った。


「そうなのか?それでは先に調べてもらって来るといい。」

「良いですか?じゃあ、、お言葉に甘えて。ロルカも行くか?」

「いや、俺はまだいい。あれから一年経ってないので変わらないから。」

「分かった。俺だけで行ってくるわ。」

「待ってイヴァン、私も一緒に行く。」


そして、イヴァンとアマーリエは連れ立って出ていった。


「マリオン、顔、笑顔が張り付いたままで怖いぞ。」

「トイス、煩いですね。顔が怒っている訳には行かないんですから、余分な事は言わないで下さい。」

「あの、何かご気分を害す事を言いましたか?」

「違う違う。ロルカ、こいつは立派な筋肉が大嫌いなんだよ。アマーリエは知らないけど、昔からだったな。」

「あぁ、もう、本当に煩いですよ!火だるまにしますよ!」


ロルカが驚いた顔で自分を見ているのにもイラつくマリオンは、思いっきりトイスを睨みつけた。


トイスがニヤニヤしながら、マリオンの肩を叩く。


「諦めろ。イヴァンはきっと五級になってるぞ。なんと言っても、あいつは私の弟子だからね。」

「結婚・・・ダルマとアマーリエが・・・結婚・・・。」

「お前、言葉に出てるぞ。」

「嫌だァー!アマーリエがダルマの横に並ぶなんて、絶対に嫌だ!!」

「落ち着け、マリオン。もうすぐ戻ってくるぞ。アマーリエに聞かれてもいいのか?」

「アマーリエに・・・。駄目だ。」


いきなり、笑顔を貼り付けるマリオンを見て、ロルカは思った。怖い。四聖にまともな人って居ないんだと。人付き合いの少ないロルカでもわかる程に。

自分はこの場で何も言わないようにしよう。自分は完全な部外者なのだから。


ロルカは姿勢を正して、やや俯き加減になり、自分は空気になろうと気配を消した。



「マリオン!喜んで。イヴァンが五級に上がってたわ。薬師になったの。これでいつでも結婚できるわ。」

「そう、おめでとう。」


全然おめでたくない。イヴァン、こいつ殴りたい。この建物から叩き出したい。笑顔の裏で、マリオンは思った。


このまま、結婚して、トイス達と一緒に自分の前から消えてしまったら自分は落ち着いて二人を認める事ができるのだろうか・・・。


笑顔のまま、悩んでいたマリオンに、その時、素晴らしい協力者が現れた。


「クピィィィィィィィ!!」


イヴァンを全力で蹴飛ばす青竜。クシュカに比べ筋肉質なその竜は、アマーリエがガランディーア王国より贈られ、卵から孵化させ、まだ幼かったので、マリオンに成育を任せた竜だった。


「こら、止めなさいハモン!」


アマーリエに叱られると、しきりに頭を擦り付けて甘え、機嫌取ろうとする。

叱ったものの、甘えるハモンにアマーリエは笑顔を向ける。元々アマーリエは絆されやすいのだ。


マリオンはハモンと目を見交わした。お互いの思いは同じ。

よし、お前に任せた。

おう、任せてくれ。


マリオンはこれで心安らかにこの火の館で過ごす事ができそうで、やっと穏やかな笑みを浮かべる事ができた。


「アマーリエ、ハモンも大きくなった。一緒に旅に連れて行って欲しい。」

「いいの?マリオンは寂しくない?」

「大丈夫だよ。旅先できっと私の代わりにハモンが君を守ってくれると思うと安心できる。」

「分かった。ハモン、一緒に旅をしようね。」


「それで、結婚だけど、やはり何処かに腰を落ち着けてからの方が良いと思うんだ。」

「え?駄目なの?マリオン、結婚に反対?」

「そうじゃないよ。ただ兄がわりとして、出来れば安住して欲しいなと思って。勝手な事を言ってると思うけど、考えてみて。」

「うん。考えてみる。」


よし、よし、よし!!!

これで時間稼ぎが出来れば。また対策はある。ハモン頑張れ!


嬉しそうに微笑むマリオンをトイスが生ぬるい目で見ている事に気づかない。


ロルカは、また食費が増えたと少し頭を抱えたが、そんな事は誰も気にしてはくれなかった。



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