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風の薬師  作者: ダイフク
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第24話 水の四聖の嘆き


水の四聖、フロアティーナ、彼女がこの地位について、15年。四聖の中で最も年下だ。力も体も弱い事は自覚している。それでも一級Sで水属性はその時、自分しか居なかったので、自分がその任に着くしか無かったのも納得はしている。


現在、一級Sの級を保持するのは五人、しかし、内、三人は既に高齢で恐らく、再度水晶で調べてみたら一級では無くなっているだろう。

残り二人は風と火。水は一人も居ない。彼女に何かあった時に継いでくれる人はいないのだ。


フロアティーナはトイスの最初の弟子だった。


トイスはどうしても薬師になりたいという彼女の願いを聞き入れ、弟子として共にある間に少しでも体が丈夫になるように気を使ってくれた。

彼女にとって、親とも、兄弟とも、そして愛する人とも思う彼は、彼女が四聖に決まった時、凄く反対してくれた。


それなのに、フロアティーナは四聖の申し込みを受けてしまったのだ。

その時のトイスの悲しそうな顔は、何年たっても忘れることができない。


彼の気持ちを無下にしてしまったのに、その後もトイスはフロアティーナに優しかった。

口では今の弟子達に意地悪な事も言うようだが、フロアティーナにとって、誰よりも優しい人。そして今も彼女の頼みを聞き、水の次代を育ててくれている。



四年ほど前、フロアティーナは魔神の長たる者の復活を夢に見た。そして、その者にあのトイスまでもが倒される姿を。

更に、自分の寿命が尽きかけて居ることも知った。

後五年?六年?

残りは十年も無いだろう。

そして、自分の後を継ぐ者はあの強大な力を持つ魔神の長と戦わなければならない。


自分を継ぐ者に誰もなって欲しくない気持ちと、強きものに継いで欲しい気持ちと、フロアティーナは心が揺れた。


その年、王都で武術大会が行われた。

開会の儀式に呼ばれたその場所でフロアティーナは彼を見つけた。

予選の試合で対戦相手と圧倒的な力の差を感じさせ、水の魔法の力を秘めた彼。その魔力は膨大で、トイスすら超えるだろう。


フロアティーナは身が震えた。

見つけた。見つけた!見つけた!!!


直ぐに自分の部屋に戻り、トイスとの緊急連絡の回路を開いた。これは水の離宮にトイスが設置してくれた特別なもの。かなりの魔力を必要とするので、せいぜい一年に一度位しか使えない。

でも、直ぐにトイスに来てもらわないと、彼に会えなくなってしまう。


急いで!急いで!!


「トイス、トイス、直ぐに来て!私を助けて!」


フロアティーナの叫びに答えたトイスは近くの固定魔法陣を利用して、その日のうちに彼女の元に来てくれた。


「フロアティーナ、どうしたんだ!」

「トイス、見つけた!見つけたの!!」


トイスは、いつになく興奮するフロアティーナに驚いた。彼女は体が弱い。興奮するのも彼女にとっては毒になるのだ。


「落ち着いて。話を聞くから。」

「ごめんなさい。私、次代を見つけたわ!」

「次代って、君はまだ若い。まだそんな先のことを考える必要はないんじゃないか?」

「駄目なの。私、もうそんなに長くない。後、五、六年だわ。それに魔神の長が復活するの。強い人に、迷惑だろうけど、お願いしたいの。」


トイスは一瞬黙ってフロアティーナの顔を見た。

彼女が死ぬと言うなら間違いはないだろう。四聖は自分の寿命を知ると言われている。

自分はまだ寿命が尽きるのを感じた事は無い。フロアティーナにとって、それを知ってしまった事がどれ程恐ろしいかは理解できる。

更に魔神の長の復活。恐ろしい予見ばかり。それをこの儚い四聖が見てしまった事にトイスは胸を痛めた。


「それで、見つけた次代は何処に居るの?今何級なんだ?」

「彼は薬師じゃないの。剣士なのよ。でも、彼ほどの人は居ない。お願い。トイス、彼を次代の水の四聖として育てて欲しいの。」

「フロアティーナ、それは無理だろう。薬師なら何とか育てられると思う。しかし、薬師の修行をした事の無い者を、あと五年で一級までなんて、無茶だ。」


「分かってる。それでもあなたにお願いしたいの。彼を次代の水の四聖にしたい。」


「その彼は剣士としては弱いのか?強ければ薬師になりたいと言わないかもしれない。」

「とても強いわ。予選から負け知らずよ。今日、準決勝なの。一緒に彼を見て欲しい。」

「フロアティーナ。わかった。大会を見に行こう。」


二人は会場に連絡し、至急席を用意して貰った。


「次に出る彼よ。カーク・ギルマン。」


トイスが会場に目を向けると、その青年は自分よりかなり大きい、前回優勝者と戦うところだった。誰もが対戦相手が勝つと思っていたが、その青年は、剣を合わせる事もなく、対戦相手に勝った。圧倒的だった。


「フロアティーナ、彼なのか?」

「えぇ、そう。トイスお願い。彼が欲しいの。」


トイスは思わず唸った。その青年は余りに強かったのだ。これでは何処の王族も彼を欲するだろう。

こんなに若くしてこの強さなら何処の国でも守りの要として、騎士団のトップにしたいと思うに違いない。


戦う時に、魔法を使っていた訳では無いが、剣が動く時、水色の軌跡が見えた。

溢れる魔力の発露だろう。意識して使っている訳では無い。余程魔力が多いのだろう。得がたい、あまりにも得がたい人物だった。


「フロアティーナ、彼は強すぎる。難しいと思うよ。」

「分かってる。それでもお願い。私の最後のお願いだから。」



結局、トイスはフロアティーナの願いが断りきれず、なんと言って彼を薬師に誘おうか悩みながら優勝し、会場を後にした青年の後を追った。


そして、酒を飲む青年に、自分でもありえないと思う勝負を申し出て、世間知らずの青年を弟子にすることが出来た。


「今日から私の事はお師匠様と呼びなさい。」




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