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風の薬師  作者: ダイフク
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第22話 青い目の銀竜


ガランディーア王国の東南の山岳地帯には飛竜の里があり、飼育を専門とするもの達の集落がある。


そのうち、最も大きい集落が今居るカナーンだ。


クシュカは既にロルカを乗せることもでき、魔物と戦う力さえ備えている。まだ幼竜からやっと若竜に育ったばかりだが、飛竜はそういうものなのかと思ったら、アマーリエに普通じゃないと教えられた。

今後の為に飛竜についてもっと勉強したくて、この集落を訪れたのだ。


「外の人には教えられない。」


これが里長の返事だった。


「やっぱり難しいわね。」

アマーリエには最初からこの返事がわかっていたようだ。しかし、アマーリエはクシュカを見たら里長の気持ちが変わるのではと考えていた。


「里長、一度ロルカの飛竜を見て、それからもう一度考えて貰えませんか?」

「その飛竜に何かあるのか?」

「はい。まだ幼竜に近い若竜なのに、他の野良飛竜を使役出来るそうです。」

「まさか、ありえない!」

「だから、見て頂きたいのです。」

「分かった。その飛竜に会おう。」


里長と集落の外に出て、ロルカはクシュカを呼んだ。

クシュカはゆっくり飛来すると、優雅に着床する。


「こ、これは!!聖龍! もしかして、既に会話もできるのか?」


聖龍とは既に伝説化した竜であり、この世には存在しない筈だった。里長は自分が見ているものが信じられない。しかし、透き通るように青い瞳が銀竜ではなく、聖龍だと伝えてくる。


「卵から育てたと言われたな?卵はどのようにして入手されたのだろうか。」

「道端に落ちていたんですよ。」


トイスの答えに里長が更に驚いた。

聖龍が滅んだ一番の理由は孵化のしづらさだったと言われている。

元々卵が生まれにくい上に、孵化が難しければ、当然種の保存は難しい。


「どうやって孵化したのですか?」

「弟子が懐に入れて温めました。」

「そのお弟子の方は魔力が多いのですか?」

「そう思いますよ。」

「そうですか。では、その影響かも知れません。」


ロルカは首を傾げてクシュカを見上げる。

なんだろう。自分の育て方が普通では無かったのか?


「この竜はおそらく本来は普通の銀竜として産まれてくるはずのものだったと思われます。しかし、弟子の方の魔力で変質し、聖龍に変化したと思われます。素晴らしい。」


里長の妙にキラキラした瞳で見つめられ、ロルカはどうしたものかとトイスに訴える目を向けた。


「里長殿、ロルカに何か?」

「この里の優秀な飛竜を三体差し上げましょう。彼を我が里に預からせて頂けませんか?ちょうど孵化が近い卵が幾つかありますので、是非彼に卵を孵化させて頂きたい。」


「里長様、数日なら彼をお貸ししましょう。その間にこちらの聖龍の成長にご協力下さい。」


アマーリエが笑顔で話をまとめていく。やっぱり四聖って強引な人が多いんだなぁと思うロルカだった。


翌日から渡された卵を温めながら、クシュカの聖龍としての特性である会話の交わし方の訓練を受け、他飛竜への威圧と隷属の仕方も教えてもらった。


「クシュカ、お前、強かったんだなぁ。」


しみじみ言うイヴァンに顎を反らせて威張るクシュカが可愛くて、成長していく姿も微笑ましい。


数日、飛竜の扱い等も教えて貰い、くれるという飛竜を断っている間に、ロルカが抱えていた卵が無事に孵化した。


「うーん。抱えて頂いた期間が短過ぎたようですね。やはり一年ほどお付き合い頂いて、産みたての卵を孵化して頂けませんか?おぉ、そうだ。良ければ私の息子になって、この里でこのまま飛竜を育てて行きましょう!」


強引なのは四聖だけじゃ無いかもしれないとロルカは思った。


「お師匠様、そろそろ出発しませんか?」

「そうだね。なに?お前は私が弟子を他の人間に譲るとでも思っているのか?心外だね。」


いや、そういう訳では無いのだがと焦るロルカを見ながらトイスはニヤリと笑った。

やっぱり自分はこの師匠にからかわれているのかもしれない。


トイスは里長に断りを入れ、弟子達に出発の準備を言いつけ、のんびりと里の外に足を運んだ。

そこにはクシュカが彼らの出発を待っていた。

里長の指導の元、会話がかわせるようになったクシュカはトイスを待って居たらしい。


「ねぇ、あなた、私とロルカを引き離そうとしても無駄よ。」

「クシュカ、ロルカの前では随分と殊勝なのに、師匠である私に対しては、随分と強気じゃないか。」

「当たり前でしょ?私、ロルカには可愛いって言われたいんだもの。」

「そんな事言っても、君は竜だから、いつかは他の女にロルカを取られちゃうかもね。」

「あなた、やっぱりやな奴だわ!ふふん。見てらっしゃい。私、もう少し育てばきっと人化できるんだから。」

「本当に?里長からはそんな説明は無かったよ。」

「私は特別なの。あんなジジイに全部わかってたまるもんですか。」


誰の影響なのか、覚えたての言葉を話すクシュカはちょっとガラが悪い。


「まぁ、頑張ってね。君、油断すると地がでそうだから気をつけてね。」



クシュカは人に変わった時のことを夢見ている。きっとロルカは可愛いって自分をイヴァンがアマーリエにするように抱きしめてくれると思う。

いつ、人になれるようになるか分からないけど、自分は結構な美形になれるような気がするクシュカだった。

その日が待ち遠しい。


暫くすると、荷造りが終わったロルカ達も里を出てきた。

さぁ、次の街に向かおう。今日もいい天気だ。


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