第五話:Fラン冒険者の一日
「申し訳ございませんが、パーティにEランク以上の方がいらっしゃらないので受注することは出来ません」
「はあああああああ」
冒険者デビューしてから早一年。
未だに、冒険者として任務を達成できたことはない。
今日も今日とて、レンガを積んで泥を塗り続けたことで得た雀の涙のお給金で、ちびちびと飲みかわしている。
「そもそも、☆1難易度でEランクからしか受注できないとかどういう考えで設定してんのよ!」
「まぁ、ソロならまだしも、パーティを組んでいてEランク以上がいないっていうのがもう奇跡みたいなもんだよな」
聞いた話によると、現在冒険者として活動しているFランクスキル保持者は、俺達を含めて五人だそうだ。それに対して、Eランクスキル保持者は五万人程度。
この数字が、現実を突きつけてくる。
「よぉFラン組! 今日の土木任務は終わったか?」
「あの任務はFランクしか受注できねぇもんなぁ! あーうらやましい!」
と、酒場で飲んでいるだけで延々といじられる始末。
これじゃあ、全く村の時と変わらないじゃないか……
「くそ……俺も最強スキルで無双したかった……」
「現実なんてこんなもんよ、諦めて明日のバイトを探すわよ」
そろそろ同僚にいじられるのも嫌になってきたので、二杯分のお代だけ払って、再びバイト募集掲示板へと向かった。
バイト募集掲示板は、任務募集掲示板の真横にあるが、両者の溝は大きい。
任務なら☆1難易度でも3000バルはもらえるが、バイトは時給500バル程度。俺達が六時間肉体労働している分を、冒険者はキノコ10個集めるだけで完了してしまうのだ。
「さてと、明日のバイトはー」
「違うだろぉ!? 俺らは冒険者なんだから、クエストをクリアすべきだろ!?」
「そんなこと言ったって、あたしたちは受注条件すらクリアしてないのよ?」
「じゃあまずは、Eランク以上のチームメイトをスカウトするんだ」
「誰がこんなFランチームに入るのよ」
すべてが手詰まりすぎる。
なにより、ここの冒険者ギルドで俺たちはFランだと知れ渡っている。こんな状態で、俺たちが話しかけても聞く耳すら持ってくれないだろう。
「そうだ、もう個人で仕事を取ってくればいいんじゃないか?」
「いまどき、個人受注で仕事なんかとれると思ってるの? あ、おねーさんもう一杯!」
どうやら、ミルはもう冒険者としてのプライドは完全に失っている。ていうか、この底辺労働者感がめちゃくちゃ似合ってる。
こいつに頼るのはやめだ。
「ちょっと、どこに行くのよ」
「俺が仕事取ってくる」
「そー、とれるもんならとってきなさい」
「あと、例え仕事が取れても、お前に分け前はやらないからな」
「はいはーい、どうせ取れないんだから」
飲んだくれてるミルを置いて酒場を出る。
まだ昼過ぎだ。町には人も多く出歩いてることだし、何かに困っている人はいるだろう。
「……だから、お前はクビだって!」
そんなとき、ちょうど誰かが言い争っている声がする。
そいつは、俺の知っている人物だった。