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第四話:手違いってそういうこと。

「――――皆さま、合格でございます」


 ミルの言葉を遮り、真反対の結果が伝えられた。

 これにはみんなも驚きだ。


「え……合格?」

「なんかの間違いなんじゃないの?」

「いいえ、今回はケンジ様の合格により賢者様がご機嫌になり皆様に合格のハンコを押されました」

「…………釈然としないな」

「ええ、全くよ」


 だが、どうやら一文無し生活は免れたようだ。

 最初は、ケンジのおかげということで少し不服だったが、後から夢だった冒険者に慣れた喜びと実感がわいてきた。


「良かったな、俺達も冒険者だ」

「とりあえず冒険者になれてよかったわー」

「そうだ、ミル。 俺と仲間にならないか?」

「へ?」

「これも何かの縁だ、冒険するのに仲間がいることに越したことはないしな」


 何かと言動に問題のあるやつだが、どうやら人として悪そうじゃない。田舎から上京して、互いに知り合いもいないことだし仲間は欲しいものだ。


「まぁ、いいわよ」

「なんだ、それなら俺達も入れてくれよ」


 そう言ってきたのは、共に受けた残り二人の受験者組。確か、コロとバヌという名前のはずだ。優しそうな青少年たちだし、いいだろう。


「あぁ、よろしくな」

「あたしと仲間になれることを光栄に思いなさいよね」

「って、お前何もすごいことしてないだろ」

「はっはっは」

 

 早速、仲間らしい雰囲気も流れてきた。

 これは、色々な問題もあったが幸先のいいスタートではないだろうか。俺も案外、神に好かれているのかもな。


「それでは、皆さまのユニークスキルを発表いたします」


 そういえば、忘れてた。

 

 冒険者には、試験を合格すると各々固有のユニークスキルを与えられる。FからSランクまであり、EからCが平均だ。BやAは超強い人。Sはケンジのような奴に与えられる。Fは論外、そもそも与えられる奴は手違いで受かったような奴だ。大抵は冒険者をすぐに引退する。


 これは冒険者人生を決めるものでもある。ユニークスキルのランクが低いと、冒険者として受注できる任務にも差が生まれる。稼げる応研社と稼げない冒険者の分かれ道だ。


「それでは、コロさん」

「はい」

「貴方のスキルは『流動』です」 


 『流動』、確かCランクスキルで、魔力の流れを活性化させるパッシブスキルだ。このスキルを手に入れると、魔術を使うスパンを上げられたり、高難易度魔術にも挑戦できる成長力のあるスキルだ。


「よっし、まぁまあ悪くない」

 

 本人もそこそこ喜んでいるようで何よりだ。

 

「次はバヌさん」

「どきどきするなぁー」

「貴方のスキルは『一鶴』です」


 『一鶴』、Dランクスキルで、鳥系の魔物を使い魔にできるスキルだ。自身が成長すれば、S級魔物も使い魔にできるかもしれない可能性の秘めたスキルだ。

 Dランクだが、本人は満足そうだ。

 

「お次にミルさん」

「はいはい! どんなSランクスキルが与えられるのかしら!」

「――――貴方のスキルは『結束』です」

「け……結束ぅうううう!?」


 とんでもない奴がいたもんだ……

 『結束』、数少ないFランクスキル。ただ、紐を簡単に結べるようになる。それだけのスキルだ。

 まさかFランクスキルをリアルで見れるとは。 ある意味Sランクよりも希少だぞ。


「おいおい、こんなのが仲間で大丈夫か?」

「まぁ、一人くらいいてもいいだろ」


 コロもバヌも呆れ気味だ。正直、俺も少し呆れている。頭もスキルも阿呆とは。


「それでは、最後にロックさん」

「はい」


 ついに俺の番だ。Bランクとか欲張ったこと言わないから、出来ればCかDがいい。Eランクにはなりたくない。


「はぁ……凄いですね、貴方のスキルは『逃走』です」

「…………へ?」

「貴方のスキルは『逃走』、Fランクが二人もいるなんて凄いですよ」


 Fランクユニークスキル『逃走』。

 ただ、逃げ足が速くなるだけ。


「やったわね、あたしと一緒よ。光栄に思いなさい」

「……やったわ、完全にやった」


 さて、ここで自分の言葉を思い出そう。

 頭もスキルも阿呆。Fランクなんて手違いで受かった奴に与えられるスキルだ。

 手違いで…………


「俺達もほぼ手違い合格みたいなもんじゃねえか! 俺の馬鹿っ!」


 頭を壁にぶつけまくる。頭からすごい流血してるが、ショック過ぎて痛みもない。


「止めて!! あたしと同じクズが死んだら困るわ!」

「止めるな! このまま出血多量で倒れてケンジの血をまるごと輸血して俺も最強になるんだよ!」


 自分でもアホなことを言っていると思うが、正気じゃいられなかった。

 しかし、そんなアホな俺を止めてくれるのはアホだけだ。コロとバヌは、俺から目をそらしている。


「おい、なんで目をそらしてるんだよ」

「いや……ちょっと」

「ほら、俺とミルの目を見ろよ」

「悪いけど……俺達、お前らとはパーティ組めないわ」

「それじゃあな」


 と、そのまま目を合わせることもなく二人はこの場を去っていった。


 Fラン冒険者二人だけが、その場に取り残された。

 俺とミルの間に言葉はなく、だが心はこの世の誰よりも一致していただろう。


「「ふっざけんじゃねえええええええ!!!!!」」


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