第三話:なんかやっちゃったなら素直に謝れ
「五番、ササキ ケンジ! 試験開始!」
名前も聞きなれないな。どこの地方出身なんだ。
「グルラアアアアアアアアア!!」
聞き飽きた咆哮にケンジも怯えている。 これは、同じ結果になりそうだな。
「くそっ……ボルメテウス・レイジ!!」
「――――は?」
次の瞬間、ケンジの右手から放たれた極大の火炎は瞬時にシーサーバルスを消し炭にしてしまった。
あれは、特S級の焔魔法。 本でしか読んだことなかったが、まさかこんな場所で見られるとは。
「な、なんじゃと……」
「あの年でボルメテウス・レイジを使いこなすじゃと……!」
お偉い方の席も騒然となった。
しかし、当の本人はずっと自分の右手を見て頭をかしげている。
「また俺なんかやっちゃいました?」
おちゃらけた様子で、そんなセリフを吐く。
「おうなんだてめぇやんのかこのやろー!」
このセリフを吐いたのは俺ではない。さっきまで泣きじゃくっていた隣のミルだ。
だが、気持ちは分かる。
俺達が命かけて逃げ切ったあの魔物を、さぞ間違えちゃいましたテヘペロとの如く倒しやがって。
文句の一つでも言わせてほしい。
結局、ケンジは魔力の尽きる様子もなく延々とボルメテウス・エイジを打ち続けて消し炭の山を築き上げた。
「試験終了! 討伐数……138体!」
その後、ヴァレクスには『最強の勇者が降臨した』と話題になり、ケンジは一躍国王に呼び出され、勇者としての地位を与えられた。
世の中にそんな都合のいい話があっていいものだろうか。俺は許せない。
試験が終わった後、俺は試験の結果を待つためにギルドの酒場で時間を潰していた。
「なっによあのいけ好かない男! 『なんかやっちゃいました?』だって!」
「あんなへんぴな格好してるくせにな! 俺達が馬鹿みたいだぜ!」
そう、あのぴーぴーうるさいミルと共にケンジの愚痴で盛り上がっていたのだ。
俺もミルも、魔物には手も足も出なかっただけに、ケンジへの愚痴は止まらなかった。
だが、どんなに悪口を言おうとも、俺とミルがゼロだったことは変わらない。きっと冒険者としての人生は終わりを告げるだろう。
「へー、アンタ、結構田舎から上京してきたのね」
「あぁ、ミルも上京組か?」
「あたしは上京というより堕天みたいな……?」
「なんだそれ、神話の読みすぎか?」
「なにはともあれ、無事二人とも無職一文無しルート確定ね」
「一緒にすんな、それにまだ落ちたと決まったわけじゃないぞ」
「けー、どうせ落ちてんのに変な期待するなっての」
だが、正直のところほぼ諦めている。
落ちたら、適当なところでバイトをしながら次の適性試験のために鍛えておこう。
『試験結果をお知らせしますので、受験者は試験受付へお越しください』
と、やっと結果が出たようだ。
けだるい体を動かして、のそのそと受付へと歩いていく。
受付に揃ったのは、四名。
「ちょっと、ケンジとかいう男はどうしたのよ」
「ケンジ様は、現在ギルド長と会談をしております」
「くっそー! ホントにムカつくやつね!」
ミルの言葉は、ここにいた四人全員の気持ちを代弁してくれていた。
何が腹が立つって、あの終わった後の知らん顔だよ。
だが、文句を言っていてもしょうがない。あれは神に愛されたタイプだ。多分、ろくでもない神様に愛されてんだろうな。
「それで、皆さまの結果をお伝えします」
「はいはい、どうせ全員不合格で――――――」
「――――皆さま、合格でございます」