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第二話:結構、冒険者になるのは世知辛い


 まず、冒険者になる前に適性試験を受けなければならない。

 そこで基本的な身体能力や魔法適性を検査し、それによって冒険者としてのスタート地点が決まる。

 冒険者ランクが高いと、最初から高難易度任務を担当することが出来るなどの利点がある。逆に、ランクが低ければこつこつと安い任務をこなし続けてランクを上げないといけない。


 俺は、親父から受け継いだ剣を担いで、適性試験会場へと向かった。


「それでは、これから適性試験を開始します」


 事前に書類を申請しておき、時間になると試験は始まった。

 

 集められた場所は、室内闘技場。 円形の砂地のフィールドに試験官二人と、今回試験を受ける俺を含めた五人が並んでいた。 また、奥の座席には偉そうな人たちも並んで座って眺めている。


「これから、一人ずつ魔物を倒してもらいます。 その討伐数と使用したスキルが今回の結果となります」


「マジか……思ったよりハードだな」


 俺は当然の如く、魔物と戦ったことなんてない。村では、基本的に自衛団が倒してくれていたから、日常的に魔物と出会うことがないから当たり前だ。

 

 しかし、試験用の魔物なんて大したことないはず。 他の四人は一切武器や魔法道具を持ち込んでいないが、俺は剣をしっかりと持ち込んでいる。これなら、そこそこいい成績も期待できるはずだ。


「それでは一番、ロック! 試験開始!」


 まずは俺からだ。 試験開始の合図とともに、闘技場の門が開かれ、魔物の影が見えてくる。


 そして、段々と見えてくるその全貌。


「あれ……思ってたのと違うんですが……」

「グルッラアアアアアアアアアア!!!!!」


 人の何倍の大きさもある大型のトラ、シーサーバルスがそこにいた。

 眼は赤く光っており、鋭い爪と牙なんかにひっかかれたらそれでおしまいだ。


「こ、こんなの勝てるかよぉぉおおお!」

「グルラアアアアアア!!」


 いきなり、シーサーバルスは高く飛び上がり、俺を踏みつぶそうと狙ってくる。体格差があるせいで、あんなのに潰されたらひとたまりもない。

 相手の素早さは異常なほどで、飛び上がってから着地するまでおよそ二秒もかからなかった。

 俺は間一髪のところで前のめりで倒れて避け切った。


 だが、相手の攻撃は止まらない。前爪でひっかき殺そうと何度も高速で腕を振ってくる。

 死にたくない一心で、俺はただ逃げ続けた。


「試験終了! そこまで!」


 試験官の終了の合図。

 それと同時に、シーサーバルスも攻撃を止めおとなしく帰っていった。


「ロックの討伐数、ゼロ!」


 悲しく響き渡るゼロという単語。 いや、いくらなんでもあれは強すぎた。まさか、他の冒険者はみんなあれを倒してきたっていうのだろうか?


「……やはり、今年のシーサーバルスは強すぎましたかな」

「なになに、あれくらい倒せなくては無駄な冒険者が増えるのみですぞ」

「税金が足りないというのだから、冒険者も減らさなくてはならないですしな」

「はっはっは」  

 

 俺が端っこでへこたれていると、お偉いさん方のそんな声が聞こえてくる。

 なるほど、これ以上冒険者を増やさないためにわざと強く設定していたのか。

 俺はどうやら、つくづく神に愛されていないらしい。


「二番、ミル! 討伐数ゼロ!」

「うわぁあああん! あんなの勝てないよぉ!」


 また一人、討伐に失敗したようだ。

 ミルと呼ばれた水色の髪が目立つ少女は、わんわん泣きながら俺の横に座った。

 

「やっぱり駄目だったんですね」

「やっぱりってなによぉ! 本来ならスライムとかのはずなのにぃ!」


 その気持ち、すごい分かります。


 それからも続々と討伐ゼロが続き、ついに最後の一人。

 どうもおろおろしている黒髪の青年。 それに、あまり見たことのない服装をしている。

 

「五番、ササキ ケンジ! 試験開始!」

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