第一話:最初は希望に満ち溢れてるもんなのよ
二日も経つと、流石に疲れてきた。
途中から共有の馬車に乗り換えたので、乗り合わせる人の数も増え、ゆっくりともしていられなかった。
だが、この駅を出発すれば、次が目的の街だ。
長い旅路だったが、わくわくしてきたぞ!
「隣を失礼する」
「あ、はいどうぞ」
この駅から乗ってきた女性が隣に座った。
装備からして、剣士だろうか。綺麗な金髪だし、顔立ちもとても整っている。高級そうな装備は、このボロっちい馬車にはとてもじゃないが似合わない。
俺も、このくらい強そうな冒険者になってみたいものだ。
「次は~終点、ヴァレクス、ヴァレクスです」
やっと着いた。
始まりの街、ヴァレクス。
冒険者になるには、この街が最適と話題の場所だ。
商業が盛んだったり、交通の便がよく人通りも多い。そのため、任務やクエストが多く、冒険者として稼ぎやすいのだ。
降りると、そこは地元の村なんかじゃみたこともない数の人が入り乱れて歩いていた。
田舎っぺ俺、一体どこへ行けばいいのかすらも分からない。
「あっ、ごめんなさい」
「ぼけっと突っ立ってんじゃねえぞ!」
人に突き飛ばされても、その人は直ぐにどこかへ消えてしまう。
俺、しょっぱなから挫けそうです……
「あの、大丈夫ですか?」
「いやもう田舎に帰りた……え?」
そんな絶望している俺に話しかけてきたのは、先ほどまで隣に座っていた美人剣士。
こんな人混みの中でも、純白の鎧とそれを引き立てる金髪は目立っている。
「見た感じ、田舎から上京って感じですね」
「その通りです……冒険者になりに来たんですけど、街自体が全く分からないです」
「なるほど、それなら丁度いい! ご案内しますよ!」
なんていい人なんだ!
見た目からして高貴な人物なのだろうに、俺みたいな田舎者にも優しくしてくれるとは……
彼女に街を紹介してもらいつつ、まずは冒険者として登録するために冒険者ギルドへと連れて行ってもらった。
「で、でけぇ……」
街の様々な建物が既に村では見たことのないような大きさだったが、このギルドはそれよりも何倍も大きかった。
正面には、大きな剣と盾が飾られており『冒険者ギルド』と看板も立っている。
中に入ると、大きなホールのような形になっているため、冒険者や酒屋の声が響き渡っている。
「それでは、私はここに用事があるので」
「いえいえ、ありがとうございました!」
「失礼しますね!」
「あ、待ってください! 貴方のお名前は!」
早足で去っていく彼女に向かって、大き目な声で問いかける。
すると、綺麗な金髪を翻して、こう名乗った。
「私はビアンカです、それでは良い冒険者人生を!」
そして、彼女はギルドの上級冒険者専用ルームへと消えていった。
ビアンカさん、きっとすごい人なんだろう。俺も、ああいう人を目指さないとな。
天使のような人に助けてもらったおかげで、どうにかギルドへたどり着くことが出来た。
それどころか、街の大まか紹介もしてもらったので迷うことは減りそうだ。
「さて、それじゃあ行きますか」