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第十二話:闇金パチンコくん


「おいあんちゃん、いくら借りたかわかっとんのかい!」

「ず……ずびばせん」


 俺とミルは、裏の部屋に連れていかれおっさんたちに土下座していた。

 そう、そんな夢のような機械はまさに夢。

 勝った金額をさらに増やそうとして負け続け、取り返すためにおっさんに金を借りて打ち続けた。

 最初は快く貸してくれたおっさんだったが、7桁を超えた段階で態度が急変。

 裏に連れていかれぼこぼこにされた。


「どうやって返済するんじゃワレゴラ!!」

「が、がんばっではだらぎまず!」

「てめえみたいな低ラン冒険者じゃ何年かかるんじゃボケコラ!」


 拝啓お母さま。

 僕の冒険者生活、ここで終わりのようです。こんな親不孝な息子でごめんなさい。


「お、この連れの女は意外に良い見た目じゃねえか。高く売れるぞ」

「い、いや! 純潔な私を高く売るなんて! 世界の大富豪が集まっても値がつけられないわ! 大富豪が可哀そう!」

「……この性格じゃ平均相場が山だな」


 ミル、頼むから黙っててくれ。

 というか、ミル売って俺を助けてくれ。

 ケンジみたいな勇者なら助けるんだろうが、俺はそんなこと知らねえ。

 こっちは生きてくだけで必死なんだよ。


「じゃあロックの内臓売ってあたしだけ助けて!」

「お前ら、クズらしい性格してるな」


 もうクズすぎておっさんたちも引いてる。


「よしとりあえずこいつら引き渡して……」

「兄貴! もう一人バカな女がいましたぜ!」


 これで終わりか、そう思っていると店内からもう一人連れてこられる。

 同じように俺らの隣に土下座させられている。横目で見ていると、おっぱいの大きい美人のお姉さんだ。

 こんなお姉さんもハマってしまう『パチンコ』なるものは恐ろしいな。


「この姉ちゃんは相当上玉だな」

「くっ、この私を罠に嵌めるとは流石だな……」


 罠というか、普通に馬鹿だけどな。俺も含めて。

 装備を見るに、女騎士だろうか。日頃のストレスとか溜まってたのかな。


「おい! まずはこの女騎士を連れてけ!」

「くっ、私は心までは屈しないぞ!」


 隣の子分が女騎士さんを連れていこうと縄を引っ張る。彼女は抵抗しているが、手と足を拘束されている状態じゃむなしいだけだろう。


「や、やめろ!」

「黙ってついてこいこのパチンカス女!」

「や、やめてください~~~!!」


 突如、衝撃が起きた。

 その女騎士は、抵抗するために地に膝をつけたかと思いきや、親分おっさんの靴を舐め始めたのだ。


「なんだぁ……?」

「ほんと許してください! 靴舐めますから! あ、ほら汚れ落ちてる!」


 なんだこの女騎士。

 さっきまでの騎士道精神、プライドはどこへ消えていったのか。

 流石のミルも俺も、あそこまでは出来ない。


「ん、んん? なんか悪い気持ちはしねえな」

「もう二度としませんのでペロペロペロ!!」

「しょうがねえな、お前ら三人は特別に見逃してやる」


 え、まじで?

 そんな疑問を解決する間もなく、俺たちの縄は解かれ、店外へ放り出された。


「あ、あたしたち助かったの?」

「どうやらそうみたいだな」


 俺とミルは互いに顔を見合わせた後、口を拭っている女騎士を見つめる。

 確かに、よく見れば見るほど綺麗で高潔な女騎士だ。一つに括られた長い金髪も、丁寧に整えているところから、育ちもいいんだろう。

 しかし、俺たちは見てしまった。

 彼女が靴を舐めて許してもらったところを。


「あ、えと、助けてもらってありがとうございます」

「……なに、弱者を守るのは騎士として当然の役割だ」


 そういうと、女騎士は去って行ってしまった。

 道行く人は、彼女が靴を舐めていたなんて知らないだろう。


「一体、なんだったんだ……」


 現実味のない、まるで長い夢を見ていたかのようだ。

 だが、財布の異常なまでの軽さは、全く夢ではなかったのだった。

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