第十一話:こんな休日過ごしている人も多そう
「よーし、報酬を渡すぞ」
クエストを終えて帰ってきた。いつもの酒場の席で、ミルとショコラは鼻息荒く待っている。
お前らは犬か。
「よし、はいミル、1500バル」
「店員さん! 唐揚げ一丁!」
「次、はいショコラ、1000バル」
「うーん、やっぱり少ない」
「文句言うな、そもそも任務単価が安すぎるんだから」
Dランクは簡単な雑魚モンスターの討伐任務ばかりだ。
前のバイトに比べたら割がいいが、やはり安い単価が中心になる。
「そうよー、ついに私とロックも馬小屋から倉庫に引っ越せたんだし」
「二人とも、なんてところに住んでたんですか……」
「そうだぞショコラ、俺たちみたいな人間はありがたく頂戴するのが筋ってもんよ」
「いやいや、それじゃCランクの任務とか受注しましょうよ!」
確かに、ショコラはDランク保持者。Cランク任務ならギリギリ受注できる。
「いやよ! Cランクって凶悪モンスターの調査とか、未開拓地域の調査とかでしょ!」
「討伐するわけじゃないですから、生態を調べて帰るだけでいいんですよ!」
「ショコラとロックはスキルで逃げ切れるかもだけど、あたしが死んじゃうじゃない!」
確かに俺の『逃走』、ミルの『加速』は逃げる点においては使える。
というか、俺のスキルは逃げる点しか使えない。
だが、ミルを除けば調査任務は意外に向いているのかもしれない。
「よし、じゃあ明日は休みだから、明後日はCランク任務受注してみるか!」
「やったー! さすがですロックパーティマスター! 社長!」
「よせやいそんな褒めるな」
「嫌よ、あたしは嫌ーーー!」
ということで、次はCランク任務を受注してみることに決定。
その日は、ミルを黙らせるために大量に飲ませて解散した。
潰れたミルが、俺の背中でゲロ吐いたのだけは後悔したけど。
*******
次の日の朝、今日は週末ということで久々の休みだ。
だが、目覚めは最悪。
起きると服が何となくべっちゃり、倉庫のすきま風が吹くと冷たく感じる。
隣には、ミルが気持ちよさそうに寝ている。
だが、口からは明らかに吐いた痕が。
「おい、起きろミル」
「ん~、まだ頭痛ーい」
カチンときたので、枕もとの水筒の水を全部ぶっかけてやる。
寝耳に水とはまさにこれ、ミルは飛び跳ねるように起きた。
「ちょっと! なにすんのよ朝から!」
「それはこっちのセリフだ、布団と俺の服を見ろ」
ミルは、寝ぼけ眼で俺の服と、寝ていた布団を見る。
そして気づく、自分が寝ゲロしていたことに。
「えっと、その……テヘペロ」
「はあ、とりあえず洗うぞ」
寝巻と布団を洗い、外の物干し竿に吊るしとく。
まだ朝早いので、夜には乾いているだろう。
「カーテンめくらないでよねー」
いつもの装備に着替えて、今日は何しようかなーとあてもなく考える。
「あ、童貞なロックじゃ無理よねーぷぷぷ」
なんせ久しぶりの休日な上、昨日の報酬分の給料もある。
「慈悲としてカーテン越しから見るくらいは許してあげるわ」
「じゃ、行ってくんなー」
「ちょ、ちょっと待ってよロックぅ!」
急いで着替えてきたミルも連れて、街中へと出る。
この町は週末になると賑わいが一段と大きくなる。行商人が多くやってくるからだ。
そのため中央市場は、様々な出店が軒を連ねている。
「あ、見て見て! ミリウス教の聖書が売ってるわ! 買っていきましょう!」
「もう4冊は持ってるだろ」
「ミリウス教の教えは何冊あっても困らないわ!」
ミルはどうやら、熱心なミリウス教信者のようだ。
教義が他力本願とか、欲しいものは奪い取れとか、そんな宗教とは思えないもので悪名高い。
ミルのこの怠惰さと傲慢さは、女神ミリウスの影響だろうか。
「で、それ買ったの?」
「もちろんよ! お金に余裕があればもっと買ったわ!」
「まあ手取り少ないしな」
今月もギリギリの生活だ。冒険者として活動を始めたが、まだ最初の一か月。今月はギリギリで生活しないといけない。
あーなんか簡単に金が増える方法とかないかな。
「おうそこの兄ちゃんたち!景気悪そうな顔してるな!」
いきなり、がたいのいいおっさんが話しかけてくる。
どうやら出店をしているようだが、店内は布で覆われており中の様子は分からない。
「そんな貧乏オーラ出てないわよ!」
「まあそんな怒るなって、うちの店でいいもんやってるんだけどよ……」
おっさんに連れられて入っていった店内は、薄暗いがそこそこの広さがあった。
そして、横に並ぶのは謎の筐体だった。
大きな音とまぶしい光が、それぞれの台から放たれており、その台に座っている客はのめりこむ様に見つめている。
「おい、なんか怪しくないかこれ」
「心配なさんな!これは異世界から入手したとんでもねえ機械なんだ!」
「い、異世界~?」
余計にきな臭い話になってきた。
異世界なんて、おとぎ話じゃあるまいし。
だが、実際にそれは俺が生まれ育った中では、見たことのない機械であるのは確かだ。
「聞いて驚くな、この機械はな……入れると金が増えるんだ」
「「な、なんだって!?」」
俺とミル、全く同じ反応。
にわかには信じがたい。だが、本当にそうならば夢のような話だ。
と、そのときちょうど台から離れ、店外へ向かう人がいた。
「いやー勝っちまった勝っちまった」
「またのご利用お待ちしておりますー」
その男の手には、大金が入れられているであろう袋。
それを見た俺とミルは、もう覚悟が決まっていた。
「おっさん!やりかた教えてくれ!」
「よしそうこなくちゃ!これは『パチンコ』っていう機械なんだがな……」
そこからは夢のような時間だった。
金を入れて、スロットを回す。当たれば大金が帰ってくる。
それに見たこともない機械の光と音で、余計に興奮させられる。
一度勝つともうやめられない、さらに勝てばもっと増える。
俺とミルは、この夢のような機械で大富豪となったのだった。
すいません相当久しぶりな投稿です。
頑張って投稿します。
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