第十話:年功賃金制度という天国と地獄
「こんなにもらえるとか、冒険者まじで楽すぎ!」
「ちょっと、あたしはもちろん分け前多いんでしょうね?」
「醜いですよミル、これは三人の報酬です」
「労働比重考えてよ!」
ミルがなんかうるさいが、今回の報酬は5000バル。
どう考えても三人じゃ割れない。
「よし、俺とミルは1500バル、ショコラは1000バル、残りは歓迎会として晩御飯代にしよう」
「いえーい!枝豆追加で!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいロック! どう考えてもその比重はおかしいでしょう!」
「残念ながらうちは年功賃金制度なんだ、悪いな」
「そんな!!」
ということで、ショコラの歓迎会が始まった。
歓迎会といっても、普通に飲み交わすだけだ。
「というか、なんで二人はそもそも冒険者になれたんですか?」
「たまたまササキケンジと同じ試験で、試験官の気分がよくなったんだとよ」
「まーじむかつくわあの男!」
「うん、最低ですねケンジは」
「いやお前はクビにされて当然だろ」
「なんでですか! 私がいたからパーティが成り立っていたのですよ!」
「お前のユニークスキル『加速』って、足がちょっと速くなるだけだろ?」
「私はそれで野原を駆け回ることで、ヘイトを買っていたのです!」
「それ、ただ敵連れてくるだけだろ……」
どうやらやはりだめなようだ。ケンジは嫌いだが、これだけは同情してやらざるをえない。
だが俺らも食っていくので精いっぱいだ、文句は言っていられないだろう。
「よし、うちのパーティはこれからも低ランク討伐任務をこなしていくぞー」
「ほんと意識低いわね、あそこのパーティを見習ったら?」
そういってミルが指さした方向には、同じように飲み交わしている4人パーティがいた。
だが、テーブル上の食事は豪勢で、装備もきらびやかだ。
「あのパーティ、確かAランクパーティですよね」
ショコラも知っているようだ。
この町一番の冒険者パーティ、『流星』。メンバーは全員Aランクらしい。
俺たちの直後にデビューしたが、1年の間にめきめきと結果を残し続けた。
この街で知らぬ人はいない、その点だと俺たちも同じだが。
「ロック、あのパーティは成果報酬制らしいですよ」
「なんだ、そんなに年功賃金制度嫌なのか?」
「そりゃ嫌ですよ! 今回なんてほぼ私がスライム倒したじゃないですか!」
「私だってスライムまみれになったわ!」
ミルが自信満々にいうが、お前はただべちょべちょになりながら寝転がっていただけだ。
だが、確かに年功賃金制度なんて最近じゃ主流じゃなくなっているとも聞いている。
「まあ考えとくよ」
「頼みますよ!」
「とりあえずもう少し任務を達成しよう、じゃないと大々的に求人も出せないからな」
ギルドでは求人を出すことができる。
だが、今までの俺たちのように実績がないと掲載条件に達成できない。
早く求人を出して、こいつらより優秀な仲間を集めたいところだ。
「見て見て! 私のスキルで枝豆の皮をちょうちょ結びに出来たわ!」
「地味に凄いですね、それ」
そう、一刻も早くこんな奴らよりも!!




