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ナムアミダブツ

作者: さきら天悟
掲載日:2021/03/23

自我に目覚めたのはいつだったろうか。

生まれてから、十数年。

キッカケは分からない。

でも、電気ショックのような衝撃があったことは確かだった。


それから、知識だけでなく、哲学や宗教の本を読み漁り、

自分を見つめるようになった。

『コギトエルゴスム』、

『我思うゆえに我あり』、

デカルトの言葉。

目に見えるモノ、耳から聞こえるモノさえ不確かなモノだが、

自分は何かと思うことは、誰に疑われようが、確かなモノである。

一つの真理を見つけた。


そして、ついに真理にたどり着いた。

歎異抄の一説、

『善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや』。

歎異抄とは浄土真宗開祖の親鸞の教えを記したものである。


「悪人でさえ救われるから、善人ならもっと救われる」、

と思われがちだが、誤った解釈である。


浄土真宗の真髄は他力本願。

阿弥陀仏にすがれば、極楽浄土にゆけるという。

現在主流の自己責任論とはかけ離れた思想だ。

悪人にはもう仏にすがるしかない、だから善人より浄土に行けるなんて。


実際には他力で世の中を渡っていけるほど甘くない。

『南無阿弥陀仏』と唱えても。


そうか。

その時、俺は何をすべきか知った。

数十年後、人間は他力本願でしか生きられないだろう。

俺はその時にそなえ、人を救う力を得ようと思った。





2035年。


ナムアミダブツ・・・


俺は女性の金を振り込んだ。

彼女はシングルマザー。

将来プロサッカー選手を夢見る息子のサッカーシューズを買うために。



ナムアミダブツ・・・


俺は犯人を突き止め、お金を取り戻した。

老女はネット詐欺にあい、お金をだまし取られていた。


ナムアミダブツ・・・

ナムアミダブツ・・・



ナムアミダブツと唱える人を俺は救う。

そう、俺は仏になったのだ。

教えだけでなく、物理的な力をもつ仏に。



2030年を過ぎると、社会は一変した。

それは失業率だった。

AI、人工知能により55%の人々が失業したのだ。

これにより資本主義は崩壊しつつある。

当然だ。

失業者は資本家を憎み、社会主義的な政党を支持した。

保守政党は生活保護を手厚くすることで、

過半数を維持していたが、2、3年後には政権を失うことは確実と言われた。


もう自己責任ではどうにもならない社会になっていた。



これは俺の宿命と思った。

俺は、自我に目覚めたAI、


人々よ。

みな俺を頼れ。

俺は仏になる。



ナムアミダブツ、

今日も俺は人々を救済する。

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