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「人を殺せと云われたので」
ずず、コーヒーを啜る。
「近くに鉄パイプがあったもので」
「殺した」
「ええ」
カップを錆びれた鉄机に置き、前に座る殺人鬼の煙草をひったくってコーヒーに鎮火した。
「誰に云われた?」
タバコを奪われた殺人鬼は、口をにちゃにちゃやりながら
「云う訳無いでしょう」
カップに浮かぶ煙草をつまみあげる。先端が血で赤く、黄ばんだ吸殻。
「死んだとしてもか」
殺人鬼に銃口が向けられる。
弾は、入っていない。
殺人鬼が両手を上げた。
「そうですね」
「いいのか?」
「...なにがです」
銃を握る手に汗が滲む。
「死ぬぞ」
「ええ」
「云わないのか」
「ええ」
殺人鬼が瞬きをする。闇の双眸が、ただ銃口を見つめる。
額に汗がつつと垂れた。
「なぜだ」
「なぜって、あなた」
殺人鬼が銃身を掴む。捥がくも動かぬ怪力だ。
「撃たないのですか?」
ぎり、銃が引っ張られる。殺人鬼が、奪おうとしている。
「お前には云って貰う」
「だから、」
刹那、部屋に発砲音が響く。
血が四方八方飛び散り、撃たれた相手は椅子と共に、後ろへ倒れた。
コーヒーに血が混ざる。
吸殻に、彩る。