表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

少女の冒険者デビューと俺のプロデューサーデビュー

 

 その日、一人の少女が冒険者ギルドを訪れた。


 その髪と瞳は燃え立つような緋色ひいろをしている。

 黒と赤を基調としたドレスは露出が多く、情熱的な雰囲気を醸し出していた。

 口許にはどこか挑戦的な笑みを浮かべ、片手に持つメイスには、炎竜をあしらった意匠がワンポイント。


 完璧――! 完璧すぎるほどの炎使いっぷりである!


 少女はどこから誰が見ても火属性としか見えない出で立ち。

 コーディネートした俺としても鼻高々である。


 草葉の陰、もとい、扉の影から見守っている俺に、少女がちらりと視線を走らせた。


 あっ、こら! そんな弱気な目をしてちゃ駄目じゃないか!

 いくら周囲の視線が、「なんだ、こいつのハジケっぷりは……」という奇異なものを見る目だとしても!


『ほら、頑張って! 注目が集まってるうちに早く受付に行け!』


 必死に目で訴えると、少女はどうにか調子を取り戻した。

 余裕たっぷりという足取りで、冒険者用の受付に歩み寄る。

 うんうん、その調子。やればできるじゃないの。


「えっ、え~と、本日は冒険者登録をご希望でしょうか?」


 受付のお姉さんは、若干緊張気味な顔をしている。

 一目で少女のことを新顔だと気づいたのは、まあお察しの通りである。

 こんな分かりやすく炎炎ほのおほのおしている少女を、敏腕受付嬢が忘れるはずもない。

 というか、たぶん街ですれ違っただけの他人でさえも、一週間くらいは覚えていそうである。


「よろしく頼む」


 少女が言葉数少なに、受付嬢の質問に答える。


 年は16。

 名前はフレア。


「属性は……炎」


 ――言わなくても分かるでしょう?


 意味深な顔で、そう笑う。


 ちなみに、属性の正式な名称は“炎”ではなく“火属性”というのが正確なのだが、こう告げるように俺が指示しました。

 なぜって、単純に火なんて言うよりも、炎って言った方が強そうだろう?

 職人は細部まで凝るものである。


「それでは、属性値の計測に移ります」


 いくつかの質問の後、受付嬢が背後の戸棚から魔導具を取り出した。

 その場にいた冒険者もなんとなくフレアに注目している。


「あの出で立ち、あの自信、相当な力の持ち主に違いない……!」


 訳知り顔で周囲の者の期待を煽ったのは俺である。

 サクラ役までこなすとか、我ながらマジで涙ぐましい努力。

 俺の言葉で少なくとも3人は新たにフレアに注目したね。


「我が炎の力、そんなオモチャで測りきれるかな?」


 フレアが少しハスキーな声でそう告げる。


 よし、練習したセリフも言い切った。

 声もいつものふんわりな感じじゃなく、ちょっと大人っぽい声音になっている。

 昨日大声で一晩中歌わせまくった甲斐があった、

 後は魔導具に触れるだけ。


 がんばれフレア! 負けるなフレア!


 フレアの白い細指が、魔導具に触れる。

 その瞬間、魔導具の目盛りが激しく振れた!


「適性は火属性……属性値はレベル8! ま、まあかなり高い方ですね。期待しています」


 ちなみに属性値の最高はレベル10である。

 8というのもかなり優秀な値なのだが、フレアは「いかにも伝説的な炎使いですよ」的な出で立ちだ。

 期待感ほどではなかったのか、受付嬢は少し拍子抜けした顔をしている。

 周囲の冒険者たちも、「まあ、それなりに優秀ってとこか」みたいな顔で視線を逸らした。


 しかし! 当事者の我々は違う!

 俺とフレアは遠巻きに顔を見合わせて、互いに心の中でガッツポーズをした。


 よっしゃ! 属性レベル8! 目標の7より1も上だ! 何度も練習した甲斐があったもんだぜ、いやっほう!


 小躍りしそうな気持ちを抑えて、俺は一足先に冒険者ギルドの外に出た。

 大仕事をやり遂げたような達成感に、心が満たされる。

 ただの空気がなんだかやたらとウマかった。


 なぜ俺がそんなに嬉しいかって?

 そりゃあもう、そうなるってもんですよ。


 なんといったって、フレアの本当の属性値は、たったの4だったんだから――。



ちょっとコメディ入った感じの美少女育成ゲームみたいな感じです。

応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ