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女子高野球部の監督  作者: トップハムハット卿
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第一球 はじまり

初めまして。

トップハムハット卿と申します。

野球好きの方に読んでもらえると嬉しいです。


監督は、まだ出てきません


照りつける日差しと、そこら中から聞こえる蝉の鳴き声。

季節はすっかり夏だ。


朝のニュースでは、””猛暑日になるので、水分補給を忘れずに””と美人なお姉さんと変な頭をした男の人が言っていた。


世の女子高生は日焼けを気にして、あまり外には出ない子も少なくないだろう。


そんな中、ここの球場ではユニフォームを身に着けた女子高生が何人も集まっている。




「ついにここまで来たね」


「まさかアタシらがホントに勝ち上がるなんて誰も思ってなかったっしょ!」


「ほんとそれ」


「あの頃とは大違いだよね〜」



胸に””ASANAMI””と書かれたユニフォームを身に着けている彼女たちは、硬式野球部の部員。

男子野球部のマネージャーではなく、女子野球部の選手だ。


今日は全国への切符をかけた大一番。

緊張しているのだろうか、少し表情が固い。


「はーー、緊張するね。でも、ここまで来たらさ、もう試合楽しむしかないっしょ!

そんでさ、勝って行くしかないっしょ!"全国"に!!」


「先輩の言う通りです。絶対行きましょう!

よし、いつもの掛け声やりますよ。




波高いくよ~!」


「「「「「「 GO!波高GO!! 」」」」」




快進撃を見せる朝波高校硬式野球部の軌跡を話すには、一年と少し───彼女たちの結成当初まで遡る。



*********





私が通っているのは、都内にある何でもない普通の女子高。朝波高校──通称””波高””。


波高に進学した理由は、なんとなく。

偏差値がそこまで高いのでもなく、とびきり低いわけでもない。

部活動が盛んなわけでもない。

特に特徴は無い。しいて言うなら、自宅から近いのが個人的に感じた魅力かな。



入学してから気が付いたけど、硬式野球部が存在するらしい。

中学の時に参加したオープンスクールでは、まったく気が付かなかった。

気が付いた日に、家に帰ってパンフレットを見てみると、運動部の欄の一番下に小さく書いてあった。




「純菜、どっか部活見学行こうよ」

「あ、うん。どこ行く?」

「野球部は?一応あるっぽいし」


ということで、野球部を見学しに行くことになった。


ちなみに、””純菜””は私の名前。

沢城(さわき)純菜(じゅんな)。どうぞよろしく。

そして、一緒に部活見学をするこの子は佐々木(ささき)美帆(みほ)

彼女とは中学の時に一緒に野球部をしていた。それからの付き合い。




さて、グラウンドに到着したはいいけど、誰もいない。


「もしかして、今日は休みなのかな?」

「残念。また明日だね」


野球部の見学は今日のところは諦め、他を見に行こうとしたけど・・・


「あ~、またアタシの負け~!」


グラウンドの横の小さな古びた建物から、声が聞こえた。


「あそこって、もしかして部室?」

「かもね。誰かいるみたいだし行ってみよ」



建物の扉の上に、””硬式野球部””と書いてある。

やはり、ここが部室らしい。



とりあえずノックをしてみる。


「はーい、誰ですかー?」


中の人が答えてくれた。


「あ、あの、新入生の沢城と言います。硬式野球部の見学をさせていただきたくて・・・」


そう言うと、扉が開き、先輩らしき人が出てきた。

ネクタイの色からして、たぶん二年生。


「見学?ウチらべつに活動なんてしてないよ?」

「え?」


部室の中を少しのぞいてみると、くつろいでいる数人の先輩がいた。テーブルの上にはお菓子とトランプ、壁にはバンドやアイドルのポスターが張られている。

ここは、あなたたちの私部屋ですか・・・。


「活動してないって、今日は休みってことですか?」

「いんや、今日どころか去年の夏くらいからずっとかなー」


なるほど。

納得した。

なぜ野球部の存在感が、こんなにも無かったのか。


「あ、でも、大会には一応出てるよ。出ないと廃部にされちゃうし」

「ちなみに、成績は・・・」


だいたい想像がつくが、一応聞いてみる。

もしかしたら、練習する必要がないくらい上手いのかもしれない。


「それ、聞いちゃう?」


聞き返され、頷く私たち。

そして、なぜか少し照れている先輩。

何でもいいから早く言ってほしい。


「全部一回戦負け・・・あはは。」


やっぱ、そうですよね・・・。


「まぁ、こんなんだけど新入部員はだいかんげー!

もしかして君たち、経験者?」

「一応、二人とも中学でやってました」

「おぉ!!ポジションは!?」


目を輝かせて食いついてくる先輩。


「えっと、私はサードをやってました」


先に美帆が答え、私もそれに続く。


「私はキャッチャーでした」

「わぉ!サードにキャッチャーかー!将来有望だね」


まともな活動をしてない部活に、””有望””とか無いと思うけど・・・。




その後も少し話をし、部室を後にした。



「純菜、さすがにあの野球部は・・・」


「「 ない(よね) 」」


お互いに苦笑い。


「ほかの部活見に行こっか」

「だね」


「でも、ちょっと残念だなー。せっかく野球部あるなら入りたかったー。野球したかったー!」


嘆く美帆。

気持ちは分かる。

野球がやりたくて波高(ここ)に入ったわけじゃないけど、私もどうせなら野球がやりたかった。


「んー、一応試合は出るみたいだし、やっぱ入る?」

「いや、いい」

「だよねー」


野球は諦めて、他の部活に入ろう。













・・・・・そう決めたはずだったんだけど。



「ようこそ野球部へー!! 君たちが入ってくれてアタシは嬉しいよ! あ、ちなみにアタシは工藤(くどう)愛衣(あい)。改めてよろしくね!そんで、こっちが──」


なぜか私たちは野球部に入部していた・・・。













入部しちゃった。

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