夢とリアルとなんとやら
あぁ・・・眠い・・・
今日も、また1日が始まる・・・面倒だ・・・。
『そんじゃ、また来週な!』
昨日帰り際に友人が発した言葉を思い出した。
「来週・・・か。」
ふいに出た言葉に彼(以降たくみ)は違和感を覚えた。
「あれ・・・」
声が妙に高い。
妙に高いぞ!!(大事な事だから2回)
風邪にしては高すぎる・・・まさか・・・
その時、たくみは悟った。
あぁこれ、【女体化】したやつだ。
瞬時に、たくみは脳裏に昨日の自分の発言がよぎった。
『来週になるまでに女体化してたら良いのにな(笑)』
確かに、女体化はしてみたいと思った。それは、半分冗談だったが、半分本気だった。
※女体化とは 男性が女性の体になっちゃうやつ。
追記 たくみは【それ系】の小説等が好物である。
※訂正 大 好 物 で あ る 。
まさか本当になるとは夢にも願いはしたが実際になるとは思わなかった。あ。
某なんちゃらタイプの効果音と共にたくみはあることに気がついた。
胸・・・は・・・?
単純に、どうなっているか気になる。
断崖絶壁か、それとも超巨大質量兵器か。
女体化の上で最も重要なことだ。
女体化したのに自分の乳が揉めない?
答案〈アンサー〉【論外だッ!!】
たくみは祈るような気持ちで視線を下に、胸へと落とした。
そして、たくみは絶句した。
ただただ。絶句した。
そう、そこには、男のロマン。母性の塊。マシュマロ。等々・・・
巨乳と呼ぶに値する代物が、そこには・・・そこにはあった!!。
そして、たくみは神に感謝した。
「神・・・様・・・」
女体化後3回目の発言。
巨乳にしてくれた神への感謝。
そんなことに気づいたたくみはしょうもないと思いつつ布団から出た。
女体化版たくみ、大地に立つ。
まずは、己の肉体を確認するために鏡がある洗面所に行かねばならぬのだ。
そこにたどり着くまでに、家族には気づかれてはならない。
何故って?
自分が一番最初に(姿を)見たいからに決まってるだろぉぉ!
抜き足差し足忍び足でそろりそろりと足音立てず洗面所へ着く。
高鳴る心臓を抑え、これが夢じゃないことを、仮に夢だとしても今目覚めないことを願いながら・・・
たくみは鏡を見た。
そこに映し出されていたのは・・・圧倒的なまでの・・・
かわいい系美少女だった・・・
「おぉ・・・!」
思わず出た声を抑え、たくみは歓喜した。
まさしく勝利を得たボクシングのチャンピオンの如く、天井高く拳を突き上げ、静かに喜び泣いた。
そして、今度は体を確認した。
『女体化したら背は低くなりたいなぁ』
なってるじゃねぇかぁぁぁ!!!!
秘技「狂喜乱舞の舞」を放ちそうになるが、正気を保ち体を上から下へと触り確認していく。
胸・・・でけぇ・・・
先ほども見たが、やはりデカイ。
服が合うのか心配になるが、低くなった背と相殺する形で服に収まっていた。
次に腰。
引き締まってる・・・だと・・・?。
次に尻・・・
うん・・・こう言っちゃなんだが・・・
俺のケツ・・・【安産型】だわ・・・
※要するに骨盤が広くケツがでかいという意味。
いや・・・待てよ・・・これ・・・まさか・・・
「夢のボンキュッボンじゃねぇかぁぁぁ!!」
つい声を出してしまい、内心ヤバいとおもったたくみであった。
※ボンキュッボンとは、巨乳くびれ(キュッ)尻の3種の神器を指した物。
なんか全国のボンキュッボンを目指し日々苦労してらっしゃる女性の皆様方に引け目を感じつつ一通り身体検査を終え、部屋に戻ろうとした次の瞬間。
悲劇は起こった。
扉が開く音・・・
ア。オワタ。
扉が開くとそこにいたのは・・・
「誰?」
俺の妹だ・・・
「お、俺だよ俺、たくみだよ。」
言ってみたはいいものの、予想通り信じてもらえる訳もなく・・・。
「は?何言ってんの?」
冷たい反応がかえってくる。
「本当に俺なんだって!」
しかし、ここで諦めては無国籍の頭おかしい人になってしまう・・・
「あのねぇ・・・あんたどうやって家に入ったわけよ・・・」
何をどうしたら女体化した事を説明できるのか・・・。
しばらく悩んでいると・・・
「どうしたの?」
今度は母親が乱入してきた・・・
「お母さん!この娘!」
嗚呼、どうしよう。
「ちょ、誰よ!」
「知らないわよ!」
もう・・・諦めたくなってきた・・・
「さっきからお兄ちゃんって言いはるんだよ?」
「俺はたくみだよ!何度言ったらわかんだよ!」
母はもはや哀れみを見せつつ俺に対し
「事情を話してちょうだい。話によっては力になれるかもしれないから・・・」
哀れまれた俺はなんか無性に腹が立ち始め、ついには沸点に到達した。
「ふざけんなぁぁ!!俺はたくみだ!それ以外の誰でもねぇッつーの!だいたい、家中鍵かかってて外からどうやって入るってんだよ!そもそも俺がいつもの寝間着着てる時点で他人じゃねぇだろうが!」
「そう言われてもねぇ・・・」
妹と母は小声で話し合うと、何かを決めたようでたくみの方に向き直る。「わかったわ。あなたがそこまで言うなら・・・」
「信じてくれるのか!?」
すると母は頷き、そして、たくみの目をしっかり見て、1つの提案をした。「ええ、信じるわ。ただし、今から問う5つの質問に「全問正解」したらね。」
確定した。これでもう疑われなくてすむ!
質問、それは多分俺が絶体絶命知っているであろう物が出るはずだ。
ならば俺が知らないわけがない!
「よっしゃぁ!どんな質問でもどんと来い!」
すると妹が
「誕生日は?」
「6月6日だろ?(ドヤァ)」
「平日の過ごし方は!?」
「朝は三DSでクラッシュブラザーズをプレイし!昼はY○uTubeを視聴し!夜はクソして寝る!!」
「好きな色は!」
「限りなく白に近いねずみ色!!」
「好きな食べ物は!」
「くら寿司の中トロ(わさび抜き!!)!!」
「得意な教科は!?」
「体育!!(ドヤァ)」
「いつもの服装は!?」
「今着てるこれだぁ!!(ドヤァ)」
「エロ本の隠し場所は?」
「俺のォ・・・!!」
その瞬間。俺の思考は一時停止した。
「俺の・・・!!俺の・・・部屋の・・・」
「どうしたの?お・に・い・ちゃ・ん?」
言えない・・・言ったら確実にバレる・・・いや、質問してきた時点でバレてるのか?
ハッ!違う!これは罠だ!仮に本当の俺だったとして・・・隠してきたエロ本の在処を言わせる気だ・・・ならば・・・
「タ、タンスの裏・・・」
あとで確認するつもりだろうが、仮に見つからなかったとしても場所を移したと・・・!
「お母さん。」
妹に言われた母は廊下に出ようとした。
「今」確認するつもりだ・・・なんて失態!俺のドアホ!どうする!?嘘がバレたら追い出される。だが本当の事を言ったら・・・俺のエロ本が・・・!!
その時、たくみの脳にささやくような声が聞こえた。
『エロ本なんて・・・また買えばいいじゃないか・・・』
そうだ・・・また買えば良い!今は!家に居ることを最優先にしなければ!
「ま、待ってくれ!」
「何?どうしたのよ?」
震えながら少しずつ声を発した。
「ベ・・・」
「ベ?」
「ベッドの・・・下だ・・・いや、下というよりは裏というか・・・」
それを聞くなり母は俺の部屋まで行ってしまった。
嗚呼・・・さよなら。僕のオカズたち・・・。
帰ってきた母は右手に本が入っているであろうごみ袋を持ち俺にこう言った。
「わかったわ信じてあげる。」
「や・・・やった!!」
「あと、この本全部捨てるからね。」
どこらから仏壇の前にあるあれの音が聞こえた気がした。
チーーーン・・・と。
「お兄ちゃん・・・本当に隠し持ってたなんて・・・キモ・・・」
ただでさえエロ本を無くしショックを受けている心に、妹がご提案に追い討ちをかけたところで父の声がした。
「あぁ?朝っぱらからどうしたんだよ?」
「お父さん。お兄ちゃんが・・・その・・・」
「?」
「や、やぁ・・・」
「ん?誰だおま・・・え?たくみ・・・?」
「そうだよ。たくみだよ。」
なんでわかんだよ・・・実の父親でもないのに・・・
そう、この父は実の父親では無い。
「どうしたんだよその姿・・・女装・・・じゃ、なさそうだな・・・」
「え?なんでお父さんはお兄ちゃん・・・いやお姉ちゃん?まぁどっちでもいいや。とにかくなんでわかったの?」
「いや、なんかたくみと立ち方とか雰囲気が同じだからよ・・・」
「「え?そんなのあるの?」」
兄妹で同じことを言ってしまった・・・というか本当にそんなのあるのか?
「あるに決まってんだろ?お前ら観察力が足りねぇんだよバカ野郎。」
本ッ当相変わらずこの人口悪いな・・・しかし、各々特にやることも無く、各自部屋へと帰っていった。部屋に着いた時、時計を見たら針は4時をを指している。どうりで暗い訳だ。
二度寝しようかと思ったが時間が微妙だな・・・。
ベッドに仰向けに寝てみるが、目の前にあるのは天井のみ。
ああ・・・なにしよう・・・ゲーム・・・なんか気分が乗らない・・・デュエルタサマードのカードでも見るか?いや、めんどくさい。暇すぎて死にそう・・・暇、暇、暇、暇、暇、暇、暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇ひまひまひまひまヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマラヤヒマラヤヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒママヒ麻痺ヒマヒマヒマヒマヒマヒマ・・・
ハッ!窓から差し込む日光。どうやら朝らしい・・・外でスズメが鳴いているのが聞こえる・・・。
ん?待てよ?今までのは夢?俺は幾度と無くこういう夢を見てきた。なら今日のも夢か?
視線を胸元に・・・
あるな。でっかいの。
妙な安心感と謎の焦りを感じつつもとりあえず腹が減ったのでリビングに向かうことにした。
「かくして、たくみの大冒険は始まったのであった・・・続く。」
「いや続かねぇよ!」
数日前の出来事を話す俺は友人に対しそうツッコミを入れた。
「冗談冗談。いやぁしかし本当にたくみが女体化するとはなぁ。」
笑いながらそう言う友人こと彼の名は「尾張 哲朗」たくみの後輩であり友人である。今たくみたちがいる「児童館」でできた友人であり、たくみと同じく不登校である。
「笑えねぇよ全く・・・」
「嘘つけお前女体化したいとか散々言ってたくせに。」
「いやあれは・・・あれこそ冗談というかなんというか・・・」
「そんなことはひとまずどうでもいいとしてさ・・・たくみ。戸籍ってどうなんの?」
「え?」
忘れてた。完全に。
「漫画とかだとなんかこう・・・どうにかなるんだけどさ・・・」
「どうにか、ねぇ・・・」
哲朗はたくみのバックから女体物の漫画を取り出し、パラパラとページをめくる。
そして、とあるページに差し掛かったところでめくるのを止めた。
「フムフム・・・」
「何のページ見てんだ?」
「戸籍関係のとこ。」
「なんかわかるか?」
その問いには答えず哲朗はスマホを手に取りなにやら調べ始めた。
「オーイ。人の話聞いてるかー?」
「ちょい待ち。」
しばらく待っていると。
「あ。」
哲朗がこえを上げた。
「ん?どうした?」
「可能だわ。」
「マジかよ。」
「このサイトに記載されてる話によると・・・」
哲朗の長ったらしい説明が始まり、半分聞き流しつつたくみはあの後のことを思い返すことにしたのだった。
女体化ねぇ・・・するなら転生したら女だったみたいな感じが良いなぁ・・・
実際になったらめっちゃ面倒そう。
とりあえず映画見に行きたい。