表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
葬送の転廻者ーウロボロスー  作者: マシュマロ
55/57

完成間近

 「ははっ、ははは、あっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!」


 「どうされましたか?ドクター。」


 「聞いてくれよ皆。ついに、ついに完成したんだ。機械神デウス・エクス・マキナの設計図を!!」


 「「「おおおお!」」」


 ある地下室の一部屋で、レグニオは研究者として、日々研究をしている。研究しているのは機械神デウス・エクス・マキナに関する項目の書類捜索、体を構成する物質、設計図等など。それらに値するものもしくは関係するものを片っ端から読み漁っていた。そしてつい先程、その設計図が完成したのだ。

 同じ研究員達もやんややんやと大喜び。


 本来ならば、機械神デウス・エクス・マキナの素体となり、動力源となる賢者の石を、彼が作る算段ではあった。しかし、肝心の設計図がなく、あまつさえ体を構成する金属すら不明だったので、急遽彼が一から手探りでやるしか他に方法はなかった。なぜなら彼しか設計図を把握していなかったのだ。

 

 「では、研究長、ついに!」


 「ああ、ここでようやく......いや、ここから更に組み立ての時間だ。」


 設計図はできた。後はパーツの作成と筋骨格の修正、及び素体となる金属の錬成だ。

 動力源となる賢者の石は自分で既に作ってあるからこの問題はパス出来る。一番の問題は金属だ。そもそも機械神デウス・エクス・マキナには一体何の金属を利用していたのかさえ分かればこれも解決できる。むしろこれが最優先となるだろう。


 「しかし、あのソロモンが作ったとされる機械神デウス・エクス・マキナ。果たしてこれが我々の最終兵器になり得る存在、なのでしょうか...?」


 「確かに、それを疑問に思うものも少なくない。むしろここにいる全員がそう思っても無理もないこと。なら、僕が説明しようか。そもそも、機械神デウス・エクス・マキナとは、さきほど君たちが言った通り、ソロモンが作ったとされる巨大な機械だ。その大きさは推測の域を出ないが、平均して、およそ二十から三十メートルと言われている。なんでおよそ、とか推測、だとかそんな曖昧な表現しかできないのは、現存物が無いからだ。設計図はほぼ全て燃やされたし、体のなった金属は不明だし、そもそも何体なのかすら、我々は把握しきれていない。全くもって未知の塊だ。しかし、それを解明、研究するのが研究者《僕ら》だろ?」


 「は、はい!ならば、我々は一刻も早く機械神デウス・エクス・マキナを完成させるのが最優先、ということですね!」


 「そういうこと。」


 説明を受けてもなお、未だに半分ほどしか理解できていなのだろうが、それは人によって違う。いわゆる個人差というやつだ。彼らもまた人間、レグニオと同じ人間という種族の生き物。全員が全員同じ人ではないからこそ説明は事細かにしなければならない。彼は未だに人間を種族という括りでしか判別していない。

 過去の悲惨な生活でそのような考えに至ってしまった。だが、ここにいる研究員は大体が彼と同じような過去を背負っている者たちで構成されている。少なくとも、傷の舐め合いであることが少なくとも読み取れる。だが、そういった者ばかりを集めているのは、単に同情心を買わせるためではなく、いずれも研究員としての腕は確かなようで、正直なところ彼は安堵していた。


 「レグニオさん。体に着ける金属についてなんですが...。」


 「何?」


 研究員の一人が彼に対して機械神デウス・エクス・マキナの身体となる金属について質問してきた。


 「体を構成するとなれば、金属である必要はあるのでしょうか?」


 「......そう、か。別に金属である必要はない、か...。」


 「ど、どうでしょうか...?」


 「......うん、そうしようか。」


 「本当ですか!?」


 「うん。ただし、あくまで金属は表面にのみ、それ以外はゴムや木材など、自然物や化学物質で試行錯誤しながらやってみよう。まあ、これから作るのは試作機に過ぎないけどね。」


 「分かりました。では、そのように対処するよう、他の方たちにも掛け合ってみます。」


 「よろしくね。」


 そうだ。何も骨格から表面まで全て金属にする必要はないのだ。ただ作ってみればいい。だって試作機なのだから。何も深く考え込むことなんて無いのだ。だが、それはいいとして、やはり金属は何がいいのだろうか。熱で溶かせば餅のように粘り気が出るデロドム鉱石でもなく、常温でも液体金属のアンドル結晶でもなければ、冷やして分子そのものを硬質化させるブレミュウ玉石でも駄目だ。どれも欠点ばかりで機械神デウス・エクス・マキナの実用的には程遠いものばかりだ。だからといって、全てを持ち合わせる金属など、この世に存在するだろうか?

 いや、待てよ?全てを......持つ?全部兼ね備えた金属...。


 「そうか。そういうことか!やっと分かったぞ!これならば、硬く、それでいて柔らかく、なおかつ軽い素材となる金属に出来るはずだ!ふふふ、やはり研究は何事にも手がかりはあるというものだ。」


 「おい諸君!朗報だ!」


 「何でしょう?」


 「僕はついに、機械神デウス・エクス・マキナに着ける金属を見つけたぞ!!!」


 「「「ほ、本当ですか!!!???」」」


 「ああ、本当だ。僕はこの金属を、『カルテノン合金』と命名しよう。」


カルテノン合金。魔力伝達率の高いユークレス鉱石、合金に最も使用するケシュテシュ石、世界で最硬と謳われるエメストス鉱石。この三種類を高温で熱し、錬金すれば完成となる。

 この合金、過程においては異様なほどに高コストだが、ほんの少し、それも十グラム程度でも存在すれば錬金で作成可能という素材で出来ている。そのため、量産においてはこれ以上無い優秀な素材である。


 「後は、僕の血を一滴入れるだけだ......。」


 最後のつぶやきに、反応するものはいなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ